日本共産党

2002年10月25日(金)「しんぶん赤旗」

芝信用金庫 女性昇進差別訴訟

女性が働き続ける土壌に

歴史刻めうれしいと原告ら


 芝信用金庫の女性十三人が、昇進・昇格差別をなくすよう求めた訴訟の和解が最高裁で成立しました。「うれしい」「よかった」と喜ぶ原告の声を紹介します。

 笹本美園さん(60)=定年退職(原告団長) 歴史を刻めて、うれしい。裁判で女性が、課長職として働ける権利を認めさせたことは、ほかの男女差別裁判にも影響を与えると思います。

 鳴海匡子さん(58)=勤続四十年(原告団事務局長) 十三人全員が昇格できる状態になったことを確認できました。いろいろなことがありましたが、安心して働けるようにという一つ思いで始めたことなので、だれ一人欠けずにきょうを迎えられました。

 石井利恵さん(56)=勤続三十七年 裁判が私たちだけでなく争議をしている女性の力になるとすごくいい。これはノーベル賞ものじゃないかしら。

 佐久間美智子さん(54)=勤続三十六年 女性が長く働いているとお局(つぼね)様といわれたりするけれど、普通のOLが普通の男の人と同じように働ける土壌をちょっとでもつくれたのでは。

 松尾由美子さん(55)=勤続三十六年 恩師や近所の八百屋さん、向かいの団地の人、みんながよかったねと喜んでくれました。差別はおかしいという気持ちにかぎをかけないでがんばってよかった。

 高部由美子さん(54)=勤続三十五年 職場では、成果主義、コース別などで女性の仕事の評価が低い。この和解が女性差別を各職場で見直すものになってほしい。これからも職場でたたかっていかないと。

 浜田邦子さん(54)=勤続三十五年 提訴したときは三十代、当時の仕事はコピーや掃除。定年退職までこの仕事を続けたくないと訴えました。残る六年、退職した人の分も含めて、働きたい。

 植松富美枝さん(52)=勤続三十四年 地裁、高裁で悔しい思いを二度しました。子どもも課長になれるといったら、「よかったね」といってくれました。

 般若みね子さん(69)=定年退職 十五年は長かった。原告は、この間、日に日に成長してきました。弁護団の力が、私たちの主張を裁判所に認めさせ、和解できました。働く女性が、後に続いてほしい。

 伊藤貴三乃さん(62)=定年退職 けさは、胸がいっぱいで食事がのどを通りませんでした。働く人々にとって大きいものをかちとったんだなー、やってきてよかったと、心からうれしい。

 関口文子さん(62)=定年退職 職場で給料明細を渡されて、この勝利の実感を味わいたかった。苦しかったけど、ほっとした気持ちです。

 播磨三枝子さん(62)=定年退職 こんなすごい内容は、夢のようです。男女平等の第一歩をこれが踏み出したのだと思います。若い人は、賃金差別や昇給差別に、あきらめないでがんばって。

 大坪慶子さん(61)=定年退職 不当労働行為で勝利し、今回の勝利。二度の勝利です。このたたかいは終わりがないかなと思っていましたが、ピリオドが打てました。


“日本から差別是正発信”

 小雨のぱらつく曇り空のもとに十三本のバラの花が開花しました。芝信用金庫の女性昇格差別など争議の和解が成立した二十四日、十三人の女性原告は、ピンクのバラのコサージュを胸につけ、最高裁前に集まりました。支援の人たちに握手ぜめにあいながら、笑い声がはじけます。

 一番に最高裁前にかけつけた原告の石井利恵さん(56)。「職場のなかで、裁判をしている私たちだけが忘年会も新年会にも誘われず、悔しかったけど、でもたたかってきてよかった」

 笑顔がこぼれてこぼれて仕方ないという感じなのは、原告最年少の植松富美枝さん(52)。同期の男性も昇格していない人がいるとして、たった一人、地裁と高裁で昇格を認められなかった原告です。今回の和解でようやく試験を受けることで課長昇格の道が開かれました。「自信を持って昇格試験を受けたい」

 同じように女性差別是正をたたかう野村証券労働組合の沖和子さん(62)が、大きな花束を原告に手渡します。「いままでは、男女差別是正の流れは、世界から日本に流れ込んでいた感じだったけど、この和解は、経済大国である日本から差別是正を発信したんです。次は私たちが続きます」と沖さん。

 「なけてきちゃった」と石井さんがあふれる涙をぬぐいます。伊藤貴三乃さん(62)は、「いま娘が引きこもりになっています。生まれてから二十九歳まで、娘には苦労をかけたけど、これからはそばにいてやれます」。

 「最高裁和解で昇格をかちとりました」の横断幕をかかげ、十三人で記念撮影。同じ組合員だった夫の不当解雇や子どもの死を乗り越えたたかってきた原告団長の笹本美園さん(60)がたからかに宣言しました。「いま和解しました」


各団体が声明

 芝信金争議が全面的に和解した二十四日、弁護団や原告団などがそれぞれ声明を出しました。

 「今日ここに多くの男女労働者がこれから人間らしく平等に働くための貴重な財産をかちとった」。芝信用金庫男女差別是正裁判弁護団と不当労働行為救済命令取消請求事件弁護団が連名で発表した声明はこうのべています。今回の和解は「高裁判決の内容を今日の司法が当然なものとしていることを証明するもの」であり、企業にたいし女性差別の是正措置を求めるものだとしています。

 また、提訴以来十五年を超えたことについて、裁判の緊急な改革を求めています。

 芝信金闘争支援会議と芝信用金庫従業員組合、男女差別是正裁判原告団の連名の声明は、「今回の昇格は世界の流れである男女平等の道を切り開き、すべての差別是正をたたかう働く仲間を励まし、人間の尊厳を守り、希望の道を大きく切り開くもの」と強調。さらに「今後は労働者の権利と女性の地位向上、人間らしく生きがいをもって働ける明るい職場の実現」をめざしていく決意をのべています。

 全労連の中嶋晴代女性部長は談話を発表。女性の管理職が少なく賃金は男性の半分など日本の現状にふれつつ、今回の和解は「はたらく女性にとって新たな道を切りひらいた」と強調。「男女平等に誰もが輝いて生き、働くことができる社会とする」ためにたたかう決意を表明しています。


男女平等へかけ橋

 芝信用金庫従業員組合の田村廣史委員長の談話 高裁判決によって、二十一世紀の男女平等のかけ橋がかけられましたが、この和解で、かけ橋を実際に渡ることができました。

 高裁で昇格・昇進が認められなかった女性一人、男性四人にたいしても昇格試験を受けることで昇進・昇格の道が開かれました。これまで不公正な昇格試験だったのですが、これからは公正になると思います。

 組合間差別、男女差別と三十年以上になる長いたたかいでしたが、だれ一人欠けることなく、ここまでかちとることができました。まだまだ課題は山積しています。金融機関に働く労働者として、地域の発展のために役立つような仕事ができるよう労働組合としても努力していきたい。

 今回の和解で、「良好な労使関係をつくる」と金庫側も約束したわけですから、そうなるよう期待しますし、可能だと思っています。

 


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