2002年10月22日(火)「しんぶん赤旗」
止血剤として使われた血液製剤「フィブリノゲン」などを投与されてC型肝炎ウイルス(HCV)に感染させられたとして、東北地方から沖縄県までの被害者男女十六人が二十一日、総額約九億円の損害賠償を国と旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ・ベネシス)などに求めて東京と大阪の両地裁に集団提訴しました。
フィブリノゲン製剤は旧ミドリ十字が一九六四年から製造販売。八〇年代以降だけでも二十九万人以上に投与され、そのうち一万人以上の肝炎発症被害があると推計される大規模な薬害被害を出しました。
もう一つの感染原因となった非加熱血液凝固因子製剤では新生児出血症などの二千四百四十五人(旧厚生省九六年調査)に投与。HCVだけでなくエイズウイルス(HIV)に感染するという悲劇を生みました。
提訴したのは、十代から七十代の男性二人、女性十四人。九人が出産時の出血で投与、そのほか手術時出血五人、新生児出血二人が血液製剤を投与され、HCVに感染。慢性肝炎や肝がんになっている被害者もいます。
訴状によると、肝炎が血液を介して感染することはフィブリノゲン製剤が承認、販売された一九六四年には予見でき、発病すると重篤になることが分かっていたのに安全確保をしなかったことは注意義務違反だとしています。さらに、同製剤が出産時の止血剤などに役立つことが医学的に証明されていないのに、国が承認し、製薬会社が販売したのは重大な過失があったとしています。
訴状は、一九七七年に米国でフィブリノゲン製剤の承認を取り消したころには肝炎感染の危険性と感染による重篤な結果を高度に予見できたとして、国と製薬会社の責任はいっそう重いとしています。
薬害肝炎問題 フィブリノゲンは血液を固める働きをするたんぱく質の一つで、数千人から一万人の血液をプールし、血漿(けっしょう)を抽出し製剤にします。
そのため、プールした血液にC型肝炎ウイルス感染者が一人でもいると全体が汚染され、感染危険が高い製剤。原料の血漿は米国の売血と国内の売血を混合して使われました。
フィブリノゲン製剤は、出産の際の出血や手術のときに止血することなどに使われました。
C型肝炎は、発症すると慢性肝炎、肝硬変、肝がんに一定の割合で進行します。