2002年10月21日(月)「しんぶん赤旗」
イタリア最大の労働組合、イタリア労働総同盟(CGIL)が呼び掛けて、十八日に行われたゼネストには、各地で多数の労働者が参加し、全国百二十都市で合計百万人以上がデモ行進と集会に加わりました。ベルルスコーニ右派政権が進める解雇規制緩和への反対と国民向けサービスの削減を含んだ予算案の見直しが主要な要求ですが、どの都市でも組合員だけでなく、自営業者や学生、文化人や司法関係者、自治体市長など幅広い階層の市民が参加したのが特徴です。(ローマで島田峰隆)
ゼネストの十日前にはイタリア最大の自動車会社フィアットが約八千人のリストラ案を発表しました。さらに右派政権が示した来年度予算案は、地方自治体向け予算を2%削減するほか、公務員の新規採用も凍結する予定です。
CGILの試算では、これらの影響により全国で合計二十八万人が失業する可能性があるといい、CGILも「雇用危機の中でのゼネスト」としました。多数が参加した背景の一つにも、雇用と生活の防衛が国民全体の緊急課題となったことがあるといえます。
各地では「フィアットの工場閉鎖反対」「雇用のために」などとかいた横断幕を掲げて、労働者だけでなくその家族、大学生や高校生、自治体関係者らも行進しました。とりわけフィアット工場がある南部パレルモのデモ行進は最終的に三万人に膨れ上がり、本社があるトリノでも二十万人が集まりました。一方的リストラへの市民の怒りを示しました。
同時にCGILがゼネストを「質のある成長、国民の権利保護と拡大、社会的結束のためのスト」(エピファーニ書記長)と位置付けたことも参加を広げるカギとなったといえます。
最大の焦点である解雇規制の緩和について同労組は以前から、労働者が安心して働くための最も中核的権利を破壊するもので、人間の「尊厳と権利」を奪うものだという角度から批判してきました。右派政権は、来年度予算案で財政赤字削減を理由に、大学・研究予算や自治体予算も減らし、国民の学ぶ権利や公共サービスを受ける権利全体に大なたをふるおうとしています。
ストはこの策動に反撃する機会となり、ローマで行われたデモ行進でも「尊厳と権利、自由をすべての人に」などの横断幕が掲げられました。
スト直前には作家や学者など知識人七十六人が「権利の保護のための総合的たたかいだ」としてストに賛同アピールを出しました。十七日までに全国約三百の市長も支持アピールを寄せたほか、当日は芸術家団体やさまざまな社会問題に取り組む非政府組織も行動に参加しました。
一方で、右派政府はスト参加者数も「貧弱だった」(マロニ労働社会政策相)などと評価し、解雇規制緩和や予算案を推進する姿勢を変えていません。しかし国会での解雇規制緩和を含む法案の扱いは来年度予算案の承認後といわれているほか、予算審議やフィアットの問題もこれから山場を迎えるため、労組は今後もたたかいを続ける構えです。