日本共産党

2002年10月16日(水)「しんぶん赤旗」

国労組合員が各地で運動

“政府は採用差別の解決に責任を持て”


 一九八七年四月に国鉄が分割・民営化されたさい、JRを不採用になった千四十七人の労働者が解雇撤回とJRへの復帰を求めているたたかいは十六年目に入りました。「政府は、採用差別事件の解決に責任を持て」と国労組合員が立ち上がっています。

 自民、公明、保守の与党三党と社民党が国労に示した「四党合意」(二〇〇〇年五月)は、「JRに法的責任なし」だけを明記し、差別雇用に関する問題は具体的な内容を示していませんでした。

 そして今日に至るまで四党は不当労働行為の差別雇用問題についてはなんら提起していません。そればかりか与党三党は一部の闘争団が起こした訴訟の取り下げや訴訟参加者の処分を迫る「三党声明」を発表。無責任な態度に終始しているもとで、政府にたいするたたかいや、四党にたいする責任を問う運動が各地で始まっています。

■北海道

 北海道では、十三ある国労闘争団が九月二十九日、札幌市で「政府・JRはILO(国際労働機関)勧告に示された公正な解決をはかれ」と横断幕を掲げ、ビラを配り、署名をよびかけました。

 ゼッケン姿の闘争団員らは「二十三人の仲間が無念の思いで世を去りました。政府は『一人も路頭に迷わせない』『組合所属で差別があってはならない』との国会答弁や特別決議を守って、採用差別事件を解決しろ」とこもごも訴えました。

 「道内の全闘争団の代表が参加した、一年ぶりの行動です」と闘争団北海道連絡会議の葛西忠雄議長(42)は話します。札幌では、署名用紙とビラを持ち、社宅や地域の労働者を訪問し、対話を始めています。

■九 州

 九州では、国労北九州地区本部と門司、小倉、八幡、筑豊、博多の五闘争団がILO勧告を尊重し、「満足のいく解決」「公正な補償」の名に値する解決の実現を自民、公明、保守、社民の各党首に求める署名を開始しました。ILO勧告は、「四党合意」の受け入れを考慮しながらも、不当労働行為については厳しく批判しています。

 九州の五闘争団は、署名運動を全国によびかけています。

 また、「政府は解決に責任を果たせ」という立場に立った政府にたいする署名運動の検討もはじまっています。

 スタートになった九月十五日の小倉駅前の座り込みでは、五十余人から署名が寄せられました。各闘争団はいま、分会で組をつくり、労働組合や団体、個人を訪問して、地域で「目に見える」運動をすすめています。

 小倉闘争団の中村訓八さん(42)は、団がつくった事業体「ポポロ」で米の販売に従事し、仕事の合間に署名を訴えています。「団総会などで二年間、何度も何度も議論してきました。私たちの行動の背後には多くの組合員がいる。団員が団結を固め、もっと運動を広げていく」といいます。

■石 川

 石川では、国労石川県支部が分会代表者会議で討論し、十一日、支部執行委員会として、「国鉄闘争の現況とたたかいについて」とした意見書を国労本部に送りました。このなかで、(1)査問委員会は中止をし、訴訟参加組合員の統制処分はやめる(2)ILO勧告を履行させる運動を中心に政府・JRを攻める(3)国鉄闘争とJR職場のたたかいを一体のものとしてとりくむ―を求めています。

 国鉄闘争を支援する広範な労働者や市民と共同し、創意あるとりくみも始まっています。

■大 阪

 大阪では、学者や法律家、文化人を中心に実行委員会をつくって八月、“走れ! ヒューマン・トレイン”と題した鉄道労働者を励ます音楽の夕べを開催、五百人以上が参加しました。集会は、採用差別事件がいまだ解決されない現状と、JR職場でいじめや嫌がらせなど数々の不当労働行為がまかり通っている実態を明らかにし、支援を広げようと確認しました。

■東 京

 東京では、国労と国鉄闘争支援中央共闘会議がよびかけ二十四日、「10・24シンポジウム」を計画しています。同時に、「JR採用差別事件の早期解決をはかる」ことを目的にした全国キャラバン(十四日〜)の集約として、二十四、二十五両日に政府と全政党、全国会議員に要請する国労総行動をくり広げます。


「三党声明」とは

 自民党、公明党、保守党の三党が四月、連名で発表した「JR不採用問題に関する声明」のこと。

 声明は、「JRに法的責任がないことを認めたとしながら、引き続き裁判によってJRの法的責任を追及する姿勢を堅持するという言行不一致をいまだ解消しておらず、組織内をまとめるという点についても、むしろ矛盾は拡大している」とのべ、一部闘争団の訴訟の取り下げや訴訟に参加している組合員の統制処分まで求めています。

 こうした与党の一方的な態度に、労働者のなかにきびしい批判があがっているのは当然のことです。これは与党三党による組合への不当な介入といわねばなりません。

 そもそも政党のとるべき態度は、「一人も路頭に迷わせない」「組合差別があってはならない」との政府答弁や決議でその実現を政府に迫っていく点で協力・共同することです。自分たちは解決の方策を示さないのに、責任をもっぱら国労に押しつけて、国労を攻撃、弱体化をはかる露骨な労働組合への介入です。

 「国家的不当労働行為」といわれ、十六年もの長期にわたり、労働者と家族を苦しめている採用差別事件の解決責任を政府や与党三党がこれまでの政府答弁や国会決議にもとづきどう果たすのか、注目されています。

 


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