2002年10月13日(日)「しんぶん赤旗」
原発の安全を国際的にチェックするために制定された「原子力の安全に関する条約」の第二回検討会合で、東京電力の原発損傷隠しの調査を担当していた原子力安全・保安院幹部と東電幹部職員がそろって、政府代表団に参加し、東電の原発などの運転管理を「適切である」という「第二回国別報告」を説明していたことが十二日までにわかりました。国みずからが国際会議の場で、不正隠しをおこなった疑惑が浮上しました。
オーストリア・ウィーンの国際原子力機関(IAEA)本部でことし四月十五日から二十六日まで開かれた同会合に出席したのは、原子力安全・保安院の藤冨正晴審議官ら十七人。東京電力本社からも、原子力技術部安全グループ副長が政府代表として参加しました。
代表団は、東電・福島原発などの運転管理の定期安全レビュー(評価)について、「安全性は高いレベルで維持されていることなどに理解を得られた」と発表していました。
東電本社の幹部が政府代表として参加したことについて、保安院国際室は、同条約で義務付けられた原発の定期安全レビューを説明するためとしています。
団長を務めた藤冨審議官は、保安院の東電不正問題の調査委員会メンバーの一人。ことし四月十二日までの調査で、記録改ざんの証言も当事者から得て、不正の事実をすでにつかんでいました。
東電の副長についても九月に公表された東京電力の内部調査によると、原子力部門の約七十人の課長、副長が事情聴取をうけており、長年にわたって組織的不正に加わっていた疑いが持たれています。不正の当事者とも言える東電代表を、政府代表団に参加させていた国の姿勢もあらためて問われています。
原子力安全・保安院は東電の不正発覚後、福島第一原発1、2号機、福島第二原発1号機など十機の定期安全レビューそのものを、安全確保の技術基準を満たしていないとして撤回しています。
原子力の安全に関する条約 九四年に原子力安全国際会議で採択され、五十三カ国一機関が参加する原発などの安全を確保するための国際枠組みを盛り込んだ条約。締約国は、三年に一度、同条約にもとづいてとった措置をまとめた国別報告を提出する義務があり、日本はこれまで二回提出。おもな義務は(1)原発を規制する法令上の枠組みを定め維持すること(2)推進から独立した規制機関を設立し、安全確保の枠組みを実施する(3)労働者、公衆が放射線にさらされるのを合理的に低く維持する(4)緊急事態計画を準備し、情報提供など影響を受ける恐れのあるときに適切な措置を講じる(5)原子力施設の立地、設計、運転の各段階で安全確保の措置をとること。
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原子力安全条約にもとづく国別報告 引責辞任する東電南社長が会長をつとめていた電気事業連合会、原子力発電技術機構などの協力をえて、経済産業省原子力安全・保安院が作成。同報告は、東電の原発損傷かくしの組織的不正に関与していた榎本聡明東京電力副社長(九月三十日で引責辞任)が委員を務めていた同省総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の意見をきき、原子力安全委員会(松浦祥次郎委員長)に報告されました。