2002年10月13日(日)「しんぶん赤旗」
高失業の時、失業手当をまた削るとはなんと冷たい政治でしょうか。
厚生労働省が十日、示した雇用保険見直し案は、失業者の命綱を削る内容です。
給付率の下限を離職前賃金の六割(六十歳未満)から五割に下げ、手当日額の上限も下げる、給付日数は自発的離職の場合、パート労働者に合わせて最大百八十日を三十日間短縮するというのが主な柱です。
手当額と給付期間の両面からの削減であり影響は甚大です。例えば五十歳(月給四十七・九万円)で自発的離職の場合の支給総額は約六十三万円(36%減)の削減、倒産・解雇などで離職の場合は約七十五万円(24%減)の削減となります。
なぜ給付を引き下げるのか。再就職の賃金より失業手当が高いと就職したがらないので「逆転現象」を解消し再就職を促進するといいます。
自発的離職の場合も、リストラで退職を強要される現実があります。中高年は離職前より極端に低賃金の仕事しかないことが問題です。これらを削減理由とするのは不当です。
雇用保険は昨年四月から、自発的離職の場合は最大三百日から百八十日に四割も削減したばかりです。
総務省調査によっても、失業手当の受給者は、失業者のわずか二割です。「収入なし」が五割を占めており、雇用保険が切れても就職できない失業者が増えているのです。
欧州諸国では失業者の七、八割が給付を受けているのと比べても、日本はあまりに貧弱すぎます。
雇用保険の改悪を、パート、派遣社員など不安定雇用を増大させる「雇用の多様化」のてこにしようとしていることも見過ごせません。
給付の削減は「正社員にこだわらずパートでも派遣でも早く就職せよ」という狙いを込めています。
失業手当を三分の一以上残して、正社員以外で働く人に「就業促進手当」を創設するのもその表れです。
改悪の理由として、失業者の急増で雇用保険財政が悪化し、二〇〇三年度中に積立金が枯渇することをあげているのは道理がありません。
失業者の激増は、無法なリストラに走った大企業と、これを応援し、不良債権処理で大倒産・大失業を招いた自民党政権に責任があります。
雇用保険は労使折半の保険料と国庫負担(給付額の四分の一)を財源としています。失業者が増えているのに国庫負担を削減し、一時は四兆七千億円もあった積立金を枯渇させたのは政府の責任です。
雇用保険料(月収の1・4%)も再引き上げをする計画です。十月から引き上げたばかりなのに、また負担増を押し付けるのは反対です。
保険財政が赤字の時は国庫負担を三分の一まで増額できます。国庫負担の増額とリストラで失業者を大量につくった大企業から特別保険料を徴収することを検討すべきです。
小泉政権が不良債権処理を加速すれば失業者はさらに激増します。
政府は「セーフティネット(安全網)の整備」を掲げていますが、今でも不備な「安全網」を削るばかりでは国民の願いに逆行します。
完全失業者が三百六十一万人を数え、家族を含めて一千万人が苦しんでいるとき、失業者に生活保障をすることはまったなしの課題です。
当面、失業手当の給付期間を一年間まで延長する、雇用保険が切れ、生活が困窮する失業者への生活保障制度をつくるなど緊急措置の実現にこそ、政府は力をつくすべきです。