日本共産党

2002年10月6日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?――…

日銀の銀行保有株買い取り


 日本銀行が、大銀行が保有する株式の買い取りを始めます。世界の主要国で、価格変動が大きく損失が出やすい株を購入するような中央銀行はありません。なぜ日銀は「禁じ手」を使ってまで大銀行を救済しようとするのでしょうか。

なぜ買い取りか

株価が下落して、大量の株を保有する銀行が損をするので、損失のもとになる株を日銀が買ってあげて、大銀行を助けるためです
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 これまで、三月、九月の決算期に株価が下がるたびに、「金融危機」が問題になり、政府は株価維持のために、さまざまな「対策」を打ってきました。経済の先行きに展望が持てる経済運営なら、株価の乱高下は起きません。

 ところが小泉内閣の経済対策は、景気を悪くするばかりで、株価維持になりませんでした。そこで、大銀行など金融機関が保有する株そのものを買い取って、大銀行の抱えるリスク(危険)を肩がわりしようということです。あわせて、落ち込んでいる株価を引き上げようという狙いも込められています。

 日銀政策委員会は、「この間、金融機関保有株式の価格変動リスクが、金融機関経営の大きな不安定要因となっている」ので「このリスクを軽減する」と説明しています。

 お札(銀行券)を発行し、通貨を安定させるのが日銀の大切な役割です。信用第一のこの役割と株のような不安定な資産を持つことは相いれません。日銀自身、直前まで株や株価指数に連動した投資信託には手を出せないと主張していたのですから、百八十度の方針転換です。

どんな方法で

大手十二行などが保有する株を、証券取引所を通さず時価で直接買い取ります。一、二年の間に数兆円分を買い取り、十年間ぐらいかけて売却する方針です

 大手十二行の株保有は二〇〇一年三月末現在、二十五兆六千億円(日銀まとめ)。このうち買い取り対象は、自己資本を上回る部分です。大手十二行の自己資本は十七兆三千億円(同)ですから、八兆三千億円が対象になります。

 証券取引所を通じて買い取ると、買い取り株の銘柄や規模がわかり、市場の株価に影響します。このため、わざわざ買い取り対象の銀行と日銀が相対で対象銘柄や規模を決める方針です。

 日銀は、買い取る株の基準として、銀行が保有する株のうち銀行株や非上場企業の株は買わないことや日銀資産の「健全性」を確保することなどをあげています。山口泰日銀副総裁は、「なるべく兆単位に乗せたい」「日銀の体力の範囲で」とのべています。

国民の負担は

銀行保有株を買うと、日銀は損失に備えてお金を積みたてる必要があります。その分、日銀が国におさめる国庫納付金が減ります。国の歳入が減るので、減った分は税金などで穴埋めすることになります。日銀の資産が信用できないとみなされれば、国際的に円の信頼もなくなります

 日銀は、年度ごとの事業で剰余金が出た場合、その一部を国庫納付金として国におさめます。二〇〇一年度までの決算ベースでみると、毎年一兆円前後が国の雑収入に入っています。

 株は価格変動が激しく不安定な資産です。これを買い取ると、日銀は株価が下がった場合に備えて価格変動準備金を新しくつくらなければなりません。この準備金は、日銀の剰余金から出します。

 剰余金というのは、日銀の事業活動ででた利益のことで、法定準備金積立や配当金を除き、全額国庫に収めることになっています。準備金をつくれば、これまで国庫に入っていた部分が減ります。

 株価が下落して損が出た場合は、この準備金で処理します。肩がわりした大銀行のリスクと損失を公的資金で穴埋めすることになります。日銀も「結果的には日銀の資金も公的な性格を持つという前提の下では、その公的部分に傷が付くということになる」と認めています。

金融は安定する?

株価下落で大銀行の経営が大変だから株を買い取ってやるというのでは、株価下落を止めることにはなりません。問題は株価が不安定な原因、小泉内閣の経済運営で悪化した日本経済をどうするかです

 速水優日銀総裁は、日本経済は少しずつよくなりつつあり、「株価だけが問題」だと強調しています。株価を心配するのは、不良債権処理の原資として保有株の含み益を使ってきたのに、含み損になれば、銀行は不良債権を処理できなくなると考えているからです。

 しかし、株価が問題なのは、日本経済の先行きが不透明で、小泉内閣の経済運営では景気回復の展望が見えないためです。小泉内閣の不良債権処理は十兆円処理して二十兆円増やすという、さんたんたる結果でした。低迷していた景気は、倒産と失業の増大で回復のめども立ちません。

 日銀の株買い取り方針決定は小泉首相が日米首脳会談で不良債権処理の加速を約束した直後でした。発表文書も「金融機関が不良債権問題の克服に着実に取り組める環境を整備する」としています。

 小泉首相は、不良債権処理を加速するために、これまで以上にきびしい査定で生きて営業を続けている中小企業をどしどしつぶそうとしています。それで銀行の体力が弱るなら、公的資金を投入すればよいという立場です。日銀の株買い取りは、この小泉流不良債権処理の加速に一役買うものです。

 こんな不良債権処理の加速を強行すれば、金融システムの安定どころか日本経済は大破たんです。


銀行の保有株

 もともと銀行が価格変動の激しい株を保有することは、預金者保護の点でも安定した金融機能を果たす点でも有害です。銀行が株を保有するのは、企業の経営を支配するためです。ところが日本の銀行では、「持ち合い株」という、資金の移動のない、帳簿の上だけの保有の仕方が幅をきかせています。このため、法律で2004年までに自己資本を超す保有株を売却することが義務づけられています。

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日銀の剰余金

 年度ごとの日銀の業務ででた利益のことです。日銀の経常収益の大部分は買い入れた手形や債券の利息やその売却による収益です。経常費用は事務費や人件費と国債売却、外為売買による損失などです。この剰余金の一部が国庫納付金として国におさめられます。




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国庫納付金

 日銀の国庫納付金は、1兆円前後。今年度の歳入欠陥が小幅ですんだのも日銀の納付金が増加したためでした。来年度の中小企業関係予算の概算要求1935億円と比べるとおよそ5倍にもなります。




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日銀の損益計算

 日銀の経常収益の大部分は買い入れた手形や債券の利息やその売却による収益です。経常費用は事務費や人件費と国債売却、外為売買による損失などです。






 


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