2002年10月2日(水)「しんぶん赤旗」
東京電力の原発損傷隠ぺい問題で経済産業省は一日、東電にたいして、刑事告発や電気事業法などにもとづく行政処分などは行わず、「厳重注意」をしました。原発の信頼性を根底から揺るがせた東電不正は、法的な処罰などいっさいないまま、経済産業省と原子力安全・保安院によって幕ひきがはかられ、不正が追認されることになりました。
法令違反の可能性が指摘されていた福島第一原発の1、2、3、5号機と同第二原発3号機の炉心隔壁(シュラウド)のひび割れについて、電気事業法で定められた技術基準に適合させるよう命令できる行政処分の規定はありますが、罰則規定はありません。しかも、問題の炉心隔壁はすでに交換され、裁断されて放射性廃棄物になっているなどの“証拠隠滅”の結果、実物の確認ができず、告発も処分もなしとなりました。
同省は、東電にたいし、「原子力発電所の安全確保活動を厳正に確認するため」の行政措置を伝えました。行政措置は、(1)特別な保安検査の実施(2)定期検査の特に厳格な実施(3)溶接自主検査実施体制に係る特別な調査(4)工事計画認可等に際しての工事理由の調査(5)使用前検査の特に厳格な実施―の五項目です。また、東電に再発防止対策の具体的な進ちょく状況を、今年度末までに報告することを求めています。
同日夕、平沼赳夫経産相は大臣室で南直哉東電社長に、「原子力施設を管理する事業者すべてに求められる品質である安全性について、組織的に確保するシステムが欠如していたことが明らかになった」と厳重注意。再発防止へ、品質保証システムの再構築や原子力の安全性と信頼性の確保に対する企業倫理の再建などを求めました。
南社長は大臣会見後、「再発防止策とりわけ品質保証システムをもう一度しっかり再構築し充実させることに全力を注ぎたい」と語りました。