日本共産党

2002年9月29日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

産廃処分場から水がめ守れ

市町村で独自の規制条例

住民運動と共産党が連携


 産業廃棄物の投棄が各地で問題になっており、なかには水道水源地の上流や浄水場のすぐ隣に産廃処分場がつくられようとして、住民が猛反対しています。そのなかで、飲料水を守ろうという住民の要求がもとで、市町村で産廃規制条例をつくるところがでてきています。処分場の許可権限は県にありますが、市町村でできる独自の取り組みです。


水道水源保護条例

きれいな水飲む権利明記

奈良・天理

 水がめの上流へ産業廃棄物処分場が建設されようとしたことをきっかけに、奈良県天理市(人口約七万人)で、住民運動が大きく盛り上がり、処分場建設に歯止めをかける水道水源保護条例が今年六月議会で制定されました。

 昨年二月、奈良県は市民の水がめの天理ダム上流への産業廃棄物処分場の設置を許可しました。

 天理市では、水道水の34%を天理ダムから取水。農業用水としても利用されています。このため翌三月には、市長をはじめとする行政や議会、自治会、各種団体が「天理の環境と命を守る会」を結成。県に許可の白紙撤回を求めました。

 汚職事件で前市長が辞職したのをうけて行われた昨年十月の市長選でも「市民の水がめの上流に産廃処分場はいらない」という市民の思いを背景に、当選した南佳策市長も産廃処分場反対、水道水源保護条例制定を公約に掲げました。しかし、南市長は当選後、「同条例が産廃処分場阻止の有効な手段であるならば、大いに検討したい」とのべたものの、ただちには実現しませんでした。

 環境問題の講座に参加した女性らが六年前に結成した市民団体「ふれっしゅ天理」は、処分場予定地の見学会や学習会を開催するなど積極的に活動。「市民の飲み水を守るには水源保護条例の制定が絶対に必要」と、調査資料なども示して、「守る会」理事会や行政、議会、自治会など関係団体に強く働きかけてきました。

 住民運動に押されて天理市は五月に条例案を提案しましたが、浄水享受権(きれいな水を飲む権利)が盛り込まれていないことや残土処分名目で実質的な産廃不法投棄ができるなどの弱点がありました。市民の働きかけで、「浄水享受権」の明記、規制対象事業に残土処分場、排水水質基準項目に環境ホルモンを追加する修正を加えて、六月議会で全会一致で可決・制定されました。

 今月五日には、同条例にもとづいて設置された水道水源保護審議会が、天理ダムの全流域(一〇・七二キロ平方メートル)を水源保護地域に指定しました。

 日本共産党は、これまでも天理ダム上流の産廃処分場問題も含めた「天理のゴミ問題」シンポジウムを開くなど、水源地保護にとりくんできました。

 昨年の市長選・市議補選でも荻原文明市議候補が「県の許可取り消し」「水源保護条例の制定」を訴え、失っていた議席を回復しました。市民と協力して、浄水享受権とともに環境ホルモンの排出規制を盛り込むなど、条例案の弱点を補強するために議会で奮闘しました。

 荻原議員は、「市民の力で実現した画期的な条例。産廃処分場の営業をさせないよう力をつくしたい」と話しています。(奈良県・山口昌亮記者)


紛争の予防調整条例

住民との協定義務付け

愛知・瀬戸

 愛知県瀬戸市で十月から、産廃関連施設の設置について、「紛争の予防調整条例」がスタートします。産廃施設を計画する業者は、住民と環境保全協定を結ばなければならないなど、同市のこれまでの関係条例や、県内他市町の類似の条例にはない、一歩進んだ内容を盛り込んでいます。

 焼き物「せともの」の里として知られ、愛知万博問題で「海上(かいしょ)の森」が一躍有名になった同市。岐阜県にも接し、東部、北部は緑の里山が続きます。

 しかし、一歩山中に入ると、産廃処理施設が次つぎに姿を現します。市内には閉鎖したところも含めて五十カ所以上も施設があり、「産廃銀座」とさえいわれる状態です。

 同市では、一九九九年七月から、産廃処理施設なども対象にする「土地利用調整条例」を施行しました。しかし、ほとんど歯止めはかかりませんでした。

 新しい条例は、説明会の開催義務化や、市長の改善命令とこれに従わない場合の罰金、氏名公表などを盛り込んでいます。市環境課は、「自治体として何ができるか、低いハードルですが、数を増やしたということです」と説明します。

 この条例をつくったのは、一昨年、蛇ケ洞浄水場のすぐとなりにまで産廃中間処理施設が計画されたからです。

 昨年夏には、「浄水場となりに産廃処分場なんて非常識」「オオサンショウウオもすむ自然を守ろう」と、地元環境団体と自治会ぐるみの運動がおこり、一万二千もの反対署名が集まりました。県はことし八月、九月、蛇ケ洞浄水場隣接地と、名古屋学院大学すぐそばに計画された産廃中間処理施設の申請を相次いで不許可にしました。

 条例制定は、この運動のなかで、住民から要求が出、大きな世論に行政が対応せざるを得なくなったものです。日本共産党は、住民とともに県交渉をしたり、くわしい情報を載せた「瀬戸民報」を発行し、署名運動でも奮闘しました。市議会でも「住民合意」「立地規制」の必要を主張し、一部は生かされました。

 地元環境団体の一つ「品野の自然を愛する『あけびの会』」代表の水野すみ子さん(50)は、「住民の運動の高まりで条例はできました。運動は、法律や条令の不十分さ、行政の対応とのたたかいともいえます。まだまだ大変です」と語っています。 (愛知県・板橋幸男記者)


 紛争の予防調整条例 特徴は、事業者、住民間の「環境保全協定」締結を義務化したほか、▽事業者による住民説明会開催義務化と、それが不十分な場合の追加説明会義務化▽紛争発生の場合、市長があっせん▽事業者が改善命令に従わない場合、氏名公表、三十万円以下の罰金を科す――などです。既存の施設に市として立ち入りができ、指導、勧告、改善命令の出せる「運用の指導条例」も同時に施行します。

 


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