2002年9月24日(火)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が、二十三日の青森市内での会見で発表した「ただちに国民の安全のための措置を――原発損傷隠蔽(いんぺい)事件をふまえての五つの緊急提言」は、次のとおりです。
東京電力につづいて、中部電力、東北電力でも、原発の損傷の隠蔽事件がつぎつぎに明らかになっている。それは原子炉冷却水の再循環系配管での損傷という、原子炉の生命線にかかわる、深刻な事故につながるものである。国民の命を重大な危険にさらしかねない重大問題を隠蔽したことは、きびしく指弾されなければならない。
問題の根はきわめて深いものがある。損傷の隠蔽が明らかになってからの、経済産業省原子力安全・保安院の対応をみても、電力会社の対応をみても、依然として「原発は安全」という「安全神話」にしがみつき、責任のがれと、当座のとりつくろいだけで、まともな反省がとうていみられない態度に終始している。
今回の一連の事態をふまえ、わが党は、政府にたいして、つぎのような内容で、国民の安全のための緊急の措置をとることを、強くもとめるものである。
事故隠しは、電力業界全体の体質である疑いが高い。ただちに専門家などからなる第三者機関をつくり、東京電力、中部電力、東北電力はもとより、他の電力会社もふくめ、全国すべての原発の総点検にとりくみ、その安全性に少しでも疑問がある原発の運転は停止させるべきである。
今回の東京電力の事故隠しは、二年前のゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社の元社員の告発がなければ、発覚しえなかったものであった。原子力安全・保安院が、事故隠しの発見も調査も是正もできないことが明らかになった。それは保安院が原発推進機関である経済産業省の一部門にすぎないからである。
「原子力の安全に関する条約」では、原子力を推進する部門と、規制する部門をわけることをさだめている。国際原子力機関の勧告にもとづいて、安全確保のための独立した規制機関をただちに確立する必要がある。
すでにこの政策は、(1)高速増殖炉によるプルトニウム利用が「もんじゅ」の事故などで破綻(はたん)したうえに、(2)軽水炉によるプルトニウム利用――プルサーマル計画も、今回の事件をつうじて、新潟、福島などの地元自治体からきびしい中止要求をつきつけられるなど、二重に破綻している。
この方式は、使用済み核燃料の再処理から、プルトニウム燃料による発電、使用済みのプルトニウム燃料の再処理まで、あらゆる段階で深刻な危険がともない、技術的にも見通しがないものである。アメリカ、ドイツ、フランスが撤退するなかで、いまなおこれに固執しているのは日本だけである。
ただちにこの路線からの全面的撤退をはかるべきである。
プルトニウム循環を中心とする核燃料サイクルのための施設は、危険性の高い施設である。青森県、茨城県、福井県など、いくつかの県に立地・計画されている核燃料サイクル施設の総点検、計画の中止が必要である。
青森県六ケ所村には、全国の原発から排出される核のゴミを貯蔵する「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」がおかれている。二〇〇五年には使用済み核燃料の再処理工場が操業を開始する予定だが、再処理工場はとほうもない放射能をかかえこむ危険きわまりない施設である。むつ市では、全国の原発で、使用済み核燃料の貯蔵プールが満杯になりつつあるもとで、それを集中して貯蔵する施設の立地が計画されている。大間町で、すべての燃料をMOX燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)とする超大型原発の建設が計画されていることも、危険きわまりないことである。
小泉内閣は、「今後、二〇一〇年度までの間に原子力発電電力量を二〇〇〇年度と比較して約三割増加することを目指した原子力発電所の新増設が必要である」とする方針を確認するなど、政府はなお原発大増設路線をすてていない。
今回の事故の教訓にてらして、原発大増設路線に、根本的なメスを入れることを、強くもとめるものである。