2002年9月19日(木)「しんぶん赤旗」
原子力発電所の損傷隠ぺいや点検記録の虚偽記載問題で、東京電力内部の調査委員会九人のうち三分の一を、引責辞任する榎本聡明副社長(原子力本部長)や処分を受けた服部拓也取締役(同副本部長)ら原子力部門幹部が占めていたことが十八日までにわかりました。
同調査委員会は、二十数件の損傷隠ぺい、虚偽記載の内部告発をうけ、ことし五月に「安全情報申告制度に係る調査委員会」(委員長、勝俣恒久副社長)として発足。委員は弁護士一人をふくめ総勢九人で、約四カ月にわたって課長、副長、主任ら関係者約七十人から聞き取りをしてきたといいます。
ところが、同委員会に、技術顧問として、原子力部門の最高責任者の榎本副社長と副本部長の服部取締役、柏崎刈羽原発副所長を務めた大出厚原子力管理部長ら、ほんらい指摘された不正への関与が問われる当事者が参加。
榎本副社長は、柏崎刈羽原発所長当時、炉心構造物の傷の兆候の報告をうけながら、点検記録に記載されなかったことを承知していたことを認め、原子力管理部長などを務めた服部取締役も、組織的不正の責任をとって十七日に減給処分を受けています。
また、ことし六月まで原子力副本部長を務めた築舘勝利常務取締役も委員に名を連ねています。
関与当事者ら責任を問われる部署の幹部が加わってまとめられた調査報告書は「今回の一連の問題に対する責任を、個別の事案の実行者として個人に求めるのは適切でない」と責任のがれを図っていました。勝俣副社長は十七日の記者会見で、調査で現場の関係者と幹部との間で主張が食い違うなど、あいまいな点があったことを認めており、調査を受けるべき当事者が、調査委員会に加わり、部下の課長や副長、主任らから聞き取りをおこなっていたことは、密室での口裏あわせをして、不正の意思決定過程をあいまいにしていた疑惑も浮上しています。
東京電力の原発データ虚偽記載問題で、同社の福島第一原発4号機の中性子計測装置の一部(ICMハウジング)の点検を実施した日立製作所(東京都千代田区)が、東電の指示に従い点検記録を改ざんしていたことが十八日、分かりました。
ICMハウジングは原子炉内の出力を測定する中性子計測装置を覆う管で、原子炉圧力容器底部を貫通しているもの。
日立によると、一九九二年の定期検査で、ICMハウジングに一本のひびを発見、運転を続けても安全上の問題ないとの技術的評価を東電に報告していました。
しかし東電保修部は、検査記録に「異常なし」と書くよう日立側に改ざんを求め、日立側はこれに従い、東電側はさらに、改ざんを内密にすることも要請していました。このため、日立社内で事実関係を知っていたのは、原子力設計部長(当時)ら数人に限られていました。
日立広報部は「担当者が、メーカーだから顧客の依頼を断れないと判断していた。社内データと東電への報告書の食い違いは残ったままだった」としています。
ICMハウジングのひびは不正が指摘された二十九件のうちの一件で、九七年十月にひびが発見されたとして国に報告されていました。