日本共産党

2002年9月15日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

介護保険料・利用料 広がる減免

 日本社会に長年貢献してきたお年寄りが、体が不自由になっても住みつづけられる町づくりは、国と地方自治体の大切な課題です。介護保険制度はそのかなめとなる制度ですが、福祉切り捨ての自民党政治のもとで、多くの欠陥をかかえ、抜本的な改善が必要です。とくに、低所得者にきびしい保険料と利用料の軽減・免除制度の改善は急務。国の圧力に抗して、独自減免に踏み切る自治体も広がっています。埼玉県草加市と静岡県浜松市の現状を紹介します。


署名・請願粘り強く

市民と共産党 議会、行政を動かす

埼玉・草加

2人の保険料半分に

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 埼玉県草加市は、二〇〇〇年度からの介護保険利用料の軽減につづいて、今年度から、保険料の減免制度をスタートさせました。

 二十年近く、夫の堀川況哉さん(75)を自宅で介護してきた房江さん(72)は、二人の保険料が半分以下になりました。

 訪問入浴と通所介護サービスを週一回ずつ利用しています。長年の介護で、ひどい腰痛症に悩まされている房江さんにとって、介護保険サービスは、夫との生活を支える命綱です。

 「年金とわずかな貯金で、やっとの生活です。減免されて、ほんとうにうれしい」と房江さん。

 自宅で縫製の仕事をしながら、妻の市村政江さん(66)を介護している昇さん(65)も二人の保険料が引き下げられて、大喜びです。

 昇さんは「不況で六、七月と仕事がなく途方にくれていた。減免は地獄に仏だね」といいます。

予想を上回る申請数

 同市の介護保険料の減免制度は、保険料の所得段階が、生活保護受給者を除く第一段階(老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税)で年収六十万円以下のお年寄り(六十五歳以上)と、第二段階(世帯全員が住民税非課税)で年収百二十万円以下のお年寄りを対象にしています。

 同市は、対象となるお年寄り約七千三百人全員に、お知らせを郵送し、大きな活字の広報誌を作成するなど減免制度の普及に努めました。

 その結果、減免申請した人は四月から四カ月間で八百四十人を超え、その九割の七百六十人余が認められました。申請は「予想を上回る状況」(市介護保険課)です。

 しかし、保険料減免は、対象となるお年寄りが無条件で受けられるわけではなく、「自宅を除き活用できる資産がない」「預貯金額が三百万円以下である」など制限がついています。

 日本共産党市議団(七人)の大野ミヨ子団長は「改善すべき問題点をかかえた減免制度ですが、それでも多くの方が申請してくる現状は、介護保険制度がいかに低所得者に過酷な制度であるかを示しています。国の責任で、低所得者対策など抜本的な改善をはかるべきです」と訴えます。

 同市では、医療生協や新日本婦人の会、市職労、日本共産党など十一団体でつくる「草加の介護保険を考える会」(小松静子会長)が、署名や市議会への請願、市担当者との懇談など粘り強く運動しています。

 日本共産党市議団は、保険料減免のための予算組み替え動議を提出するなど、議会のたびに、お年寄りの介護と生活の実態を具体的に示しながら、制度の改善を迫ってきました。

全会一致で請願採択

 同市の保険料減免は、昨年九月議会で、日本共産党市議団が、市長から「減免を検討中」との答弁を引き出し、それまで減免に背を向けていた自民系・公明党などの与党会派も賛成に回って、「草加の介護保険を考える会」の請願が全会一致で採択されたことが、一つのきっかけでした。

 小松会長(71)は「介護保険制度の改善に向けて、行政や議会の方々と住民の立場で解決すべき課題を共有しあい、解決のために努力しあう関係をつくってきた結果だと思います」と話します。

 同会と同党市議団はひきつづき、市の介護保険料・利用料減免制度の改善を求めていくことにしています。 (地方部 村崎直人記者)


支援センターを設置

条件の制約など課題も

静岡・浜松
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 静岡県浜松市では、昨年十月から、介護保険料段階が第一・二段階の高齢者(約二万五千人)を対象に、保険料の独自の減免を実施しました。

 市は当初「考えていない」といっていました。介護現場の実態をもとに要求しつづけてきた「介護・医療と社会保障を考える市民の会」の粘り強い運動と、日本共産党市議団(四人)の奮闘が実を結んだ成果です。

昨年3千近い相談

 また、市は、高齢者の介護や生活にかんする相談に応じ、介護保険を含む介護・福祉サービスの利用につなげるために、長寿支援センターを設置。長年、保健福祉行政で相談業務にたずさわってきた八人の専門職員を配置しました。

 昨年度の相談件数は三千件近くで、介護保険関連の相談が四割、それ以外の福祉サービスの相談が一割。住居や医療費、家族問題などの生活相談も一割を超えています。

 介護保険制度スタートを機に、相談業務まで民間の在宅介護支援センターなどに丸投げしてしまった市町村が少なくありません。その点では、市が長寿支援センターを設置したことは、一定評価できます。

 しかし、市民の老後をしっかりと支える相談窓口制度として機能するためには、改善すべき課題がたくさんあります。

 たとえば、相談には応じても必要な介護・福祉サービスの利用につながらないなど問題が解決しないケースが少なくありません。とくに、低所得や精神障害など、介護保険サービスの民間事業者が敬遠しがちな高齢者への対策は、困難ケースに対応する市直営のホームヘルプ事業がないなど、きわめて不十分です。

承認はわずか51人

 また、長寿支援センターが介護保険サービス利用者を対象に行った調査(二月公表)で、介護保険制度がはじまってサービス利用量が「減った」と答えた人が一割いました。「減った」人に理由を聞いたところ、六割が「自己負担が増えたから」と答えています。

 しかし、市は、利用料の軽減を実施していません。保険料も、減免条件として、生活保護基準以下で預貯金等五十万円以下などの厳しい制限があるため、減免を認められた人は、わずか五十一人にとどまっています。

 私たち党市議団は、市の相談体制と介護・福祉サービスの整備、保険料減免の充実と利用料減免の実施など、自治体としての公的責任をいっそう果たすように求めていきたいと思います。(村松幸久・浜松市議)

 


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