日本共産党

2002年9月8日(日)「しんぶん赤旗」

大量被ばく なぜ起きた

東電福島第一原発

炉心内での危険作業


図

群ぬく1969人(97年度)

 炉心隔壁(シュラウド)の交換作業で二千人の労働者が、労災認定基準の五ミリシーベルト以上の放射線被ばくした東京電力福島第一原子力発電所。異常な事態はなぜ起きたのか。背景を探ると――。

20ミリシーベルト

超は106人も

 炉心隔壁の交換作業が行われた一九九七年度の東京電力福島第一原発作業員の被ばく数(五ミリシーベルト以上)は、千九百六十九人と群を抜いています。二〇ミリシーベルトを超えたのは百六人でした。

 福島第一原発に続く被ばく者数、中部電力浜岡原発の五百六十六人、関西電力大飯原発の四百三十七人、東電柏崎刈羽原発の三百一人、日本原子力発電東海第二発電の二百十六人と比べても歴然としています。

 翌九八年度をみても福島第一原発は千六百二十九人と最も多く、二十人が二〇ミリシーベルトを超えています。二〇ミリシーベルトを超えているのは九七、九八年ともに、福島第一原発だけです。

 九七年五月の福島第一原発3号機の炉心隔壁交換工事を請け負った東芝(東京都港区)は、自社ホームページで「世界初のシュラウド取替え工事」「工法の開発実績が認められ、工事主契約者となり、シュラウド取替工事をとりまとめました」と誇っています。日本では初めての炉心内作業でした。

除染、遮へい

したというが

 工事は、東電が東芝に発注し、下請けに東芝プラント建設、石川島播磨重工業(IHI)、ゼネラルエレクトリック社(GE)、日立製作所が参加、共同で作業にあたりました。

 東芝広報部は「うちが最終的にとりまとめた。シュラウドを東芝製と呼んでもらって結構」といいます。同社ホームページの「炉内作業の状況」には、炉内下部に立つ同社女性エンジニアの写真を掲載。化学除染と炉内遮へいを設置した結果、炉内下部でも「ノーマスクの作業が可能」と、ことさら安全性を強調しています。

 しかし、その炉内下部に位置する、ジェットポンプの取りかえ工事を請け負ったGE社員の内百六人が、二〇ミリシーベルトを超える極めて高い線量を記録しています。

 東芝広報に自社社員を含む作業員の被ばく状況を質問すると「当時のことは分からない」という回答でした。

 東電によると、炉心隔壁は、高さ約七メートル、直径約四・五メートルの円筒形で、重量は約三十五トンあります。燃料集合体を上下で支える格子板や炉心支持板が組み込まれています。

 工事に際して、GE社員約二百人が、第一原発がある大熊町に滞在。地元紙によると、米大使館商務担当公使とGE幹部が、町長と懇談しGE社員と地元住民が稲刈りやパーティーで交流しています。

 地元関係者は「東電はGEの社員が熟練した技術者であることを、ことさら強調していた」と振り返ります。

 日本ゼネラル・エレクトリックは「東芝さんが元請けなら、東芝さんに聞いてもらったほうが早い。本社に問い合わせないと当時の事情は分からない」としています。


労働者の健康管理は不透明

 日本共産党の伊東達也福島県議の話 炉心隔壁の交換は、寿命がきた原子力発電所施設の高齢化対策だ。当初、炉心隔壁をはじめ炉心部内にある部品を交換するなど予定されていなかったと聞いている。今回の損傷隠しで、県内原発のシュラウドにひびが入っていたことが明るみに出た。データの改ざんを隠すためにもシュラウドを急いで交換する必要があった。その結果、従業員がひどい被ばくをすることになったことに憤りを感じる。従業員が被ばくしても労災認定や健康管理がきわめて不透明だ。非常に危険な炉内作業に従事している下請け労働者の安全教育について、国はきちんと指導すべきだ。

 


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