2002年8月17日(土)「しんぶん赤旗」
財界が「雇用流動化」をいい出して久しくなります。必要な時に必要なだけ雇用し、必要がなくなったら容易に解雇できる――そうした人件費抑制の仕組みづくりを狙った言葉です。労働者にとっては、雇用のいっそうの不安定化、賃金の低下をもたらします。政府は、これを政策的に促進してきました。厚生労働省がこのほどまとめた「二〇〇一年雇用動向調査結果」は、「雇用流動化」が雇用の現場で浸透しつつあることを明らかにしています。
転職して新しい職場に入った労働者の就業形態を、前の職場と比較したところ、〇一年で増加しているのは唯一、パートタイム労働者からパートタイム労働者への移動(前年比2・7ポイント増)でした。パートという短時間で低賃金、諸権利も弱い労働形態だけが増加しています。
正規労働者を意味する一般労働者から一般労働者へは、移動労働者全体の60・9%で、まだ過半数を占めますが、比率は年々減少。十年前の一九九一年と比較すると71・9%から11ポイントも低下しています。一方、パートタイム労働者は同期間に10・0%から19・2%へ9・2ポイント増とほぼ倍増です。
また、一般からパートタイムに変更した労働者は、九一年には6・3%だったのに、〇一年は8・9%に四割以上増加しています。不安定雇用の拡大です。
離職理由を調べたところ、リストラ・人減らしや倒産など「経営上の理由」は、九一年の4・5%から〇一年は12・0%と二・七倍の増加です。「契約期間の満了」や「定年」も企業都合の離職といえます。これも加えれば、企業の都合による離職は〇一年は27・6%と三割に近づきます。
一方、「個人的理由」による離職は〇一年は66・3%でなお過半数を占めますが、九一年の78・8%からは12・5ポイントも減少しています。いやがらせによって退職に追い込まれる例もあり、すべてが「個人的理由」とはいえない面があります。
転職して新たな職場に入職した労働者の賃金を調べたところ、前の職場より「増加」した人は30・9%で、前年より2・3ポイント減少しました。一方、「減少」した人は31・3%で、前年より0・4ポイントの増加です。転職して賃金が下がる方が、増加を上回っています。
とくに、四十五歳以上の年齢になると、前職より賃金が「減少」した人は、「増加」した人を大きく上回ります。六十〜六十四歳層では「増加」はわずか6・9%、「減少」は64・8%で十倍近くにのぼります。四十四歳以下では、「増加」が「減少」を上回ります。