2002年8月14日(水)「しんぶん赤旗」
「労働組合をつくってよかった」。長野県内の富士通の下請け関連会社の従業員が解雇撤回を求めて労働組合を結成し、このほど解雇通告を一時凍結させて職場に復帰しました。長野市にあるJMIU(全日本金属情報機器労働組合)三立支部の組合員十人です。ほとんどが女性組合員です。
三立は、電機機器の鉄板や板金加工などを仕事にし、三分の一は富士通グループの仕事を請け負っています。六十数人の従業員で、勤続二十年以上の人が多く占めている、といいます。
同社は、全従業員の約三分の一にあたる二十人を今年六月二十八日から三回に分けて呼び出し、理由も示さないでいきなり解雇通告しました。
雇用保険や離職票、健康保険、退職金などについて説明はなく、問答無用に「余っている年休を使って七月二十九日(退職日)まで休むように」といったきりでした。
ちょうど同時期、富士通は長野県内で三千人規模の人員削減を打ち出しました。これら一連の大リストラの影響であることはあきらかでした。
解雇通告された従業員のなかには母子家庭も多くいました。困り果て、電話帳で調べて長野県労連(全労連加盟)へ相談に駆け込みました。
「労働組合をつくってたたかう以外にない」。相談を通じて、決意を固めました。十人が立ち上がり、解雇通告から二十日後の七月十九日に労組を結成したのでした。
「これまでも解雇されて泣く泣く職場を辞めていった、たくさんの同僚を見てきました。自分たちが解雇通告されて初めてその悔しさがわかりました」。女性組合員たちは口をそろえます。
しかし、団体交渉で、組合員が「なぜ私たちを解雇するのですか」「どのように人選したのですか」と追及しても、会社側は黙っているだけで、「申し訳ないというおわびの言葉さえない」。なかなか態度を変えようとしませんでした。
事態が大きく変化したのは、三立支部が加盟するJMIU長野地方本部が県経営者協会に申し入れてからでした。同協会も「あまりにも乱暴な解雇だ」と理解を示し、会社側に一時凍結の方向で働きかけました。その結果、会社側が最終的にこれをのみました。
「不安で眠れなかった毎日が続きましたが、ようやくこれで少し眠ることができます。これも団結の力、組合の力です。でも安心はできません。一時凍結はしましたが、今後、全従業員を対象にした新たなリストラ計画を提案してくる可能性もあります。団結の力を信じてたたかい続けたい」と、労組委員長の女性は決意を込めました。