2002年8月7日(水)「しんぶん赤旗」
検察庁の「調査活動費(調活費)」をめぐる不正流用疑惑が問題になっています。不正流用を告発したのは前大阪高検公安部長の三井環被告(58)=収賄罪などで起訴=ら。三井被告は、捜査情報を教える見返りに元暴力団関係者から接待を受けたとして収賄罪などで起訴され、現在、大阪地裁で審理中。それ自体は厳正に裁かれるべきものですが、同時に、不正流用疑惑も告発の動機がどうであれ、税金の使途にかかわる問題だけに見過ごすことはできません。この疑惑をまとめると―。
調活費とは、公式には、検察が情報提供者に支払う謝礼金などの予算。一九九八年度には約五億五千二百万円が計上されています。このお金は、「性質上、具体的な使途を明らかにできない」(森山真弓法相)とされ、情報公開も拒否。いわば、検察庁の“闇金”となっています。
今年になって、検察内部から調活費不正流用を公然と告発する声が上がりました。一人は起訴された前高検部長。もう一人は、前高検部長の告発に対する法務省の対応に不満だという福島県の元副検事です。前高検部長は、七月三十日におこなわれた大阪地裁での初公判で、調活費による「裏金づくり」の手口をこうのべました。
――まず架空の情報提供者を数人作り上げる。「情報提供者」に謝礼(情報一件あたり三―五万円)を支払うふりをして虚偽の支出伺い書を作成する。「情報提供者」が謝礼を受領したとする領収書を偽造する。浮いたお金を事務局長が金庫に保管してプールし、裏帳簿もつける。
元副検事の高橋徳弘氏も「領収書を偽造していた」という体験を、市民オンブズマンが仙台地裁に提出した陳述書(六月二十四日付)のなかで語っています。
これによると、元副検事は仙台高検の庶務課にいた一九八二年ごろ、庶務課長から、「秘密は守ってほしい」などといわれ、領収書の偽造をはじめました。三十―五十枚ほどの領収書に偽名を書き、その名字の印鑑を押しました。
一度に何枚もの領収書を書いたとわからないように、ボールペン、万年筆、サインペンなど三種類ほどのペンを使用し、印鑑も二、三本用意しました。元副検事は、仙台地検在籍時や副検事になってからも同様に領収書を偽造し、高検の庶務課長や事務局長に送り返していました。
二人の「告発」に共通しているのが、こうしてつくられた「裏金」を検察幹部が遊興に使っていた、ということです。
前高検部長は、「検事正、検事長、検事総長らの高級料亭、高級クラブ、ゴルフ代等の遊興飲食は、(事務局長が)すべてこの裏金で支払いをする」と陳述。前高検部長自身が地方の次席検事をしていた時、年十回ほど高級料亭での幹部検事の接待などに同席し、一回十万円から三十万円の裏金を使っていたことを公判で明らかにしました。
元副検事は、「偽造した領収書は、庶務課長が管理するプール金ねん出に使われると思った。庶務課長が『高級クラブ』の請求書が回ってきてぼやいていたことがあった」と陳述書のなかでのべています。
さらに二人の告発の“裏付け”ともいえる現象があります。調活費についての匿名の内部告発が出回りはじめた一九九九年度以降、調活費予算が急減しているのです。今年度の調活費は、九八年度の二割以下にまで削減されています。また、市民オンブズマンの調査で、九八年度まで調活費の執行額が、端数もなく予算とぴったりだったのに、九九年度から急に一円単位の端数が出てきていることも判明しました。
法務省は、急激な予算減少について、コンピューターネットワークの整備に予算を振り替えたためなどと説明しました。しかし、日本共産党の井上哲士参院議員が国会で「コンピューターネットワークの整備に替えられるようなものは、国民に明らかにできるのではないか」と追及したのに対しても、「秘匿を要する」と公開を拒否しています。まさに疑惑を深める対応です。
調活費問題について法務省は「昨年刑事告発がされ、所要の捜査をした上で不正流用の事実が認められなかった」(森山法相)と疑惑を全面否定。他方で「疑いを招かないように」と、最高検に担当検事を配置し定期的に調活費の監察を行うことを二日、発表しました。身内で身内の疑惑を調べるだけでは、国民の検察不信は晴れません。情報公開など真相解明が強く求められています。