日本共産党

2002年8月2日(金)「しんぶん赤旗」

世界の核兵器 その実態は

備蓄はいまも3万発


 二十一世紀を迎えた今、世界には米ロを中心に約三万発の核兵器が蓄積されています。ブッシュ米政権の脱退通告で弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約が失効、米国は非核兵器保有国にも核先制攻撃を行う態勢をとっています。また事実上の核兵器保有国インドとパキスタンとの対立が激化。米誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』の「終末時計」は今年二月末、二分間進められ「人類破滅まで七分」と警告しました。同誌に定期掲載されている天然資源保護評議会(NRDC)の「ニュークレア・ノートブック」などからその実態をみました。



米   国

 米国は、一万六百発以上の核兵器を保有、うち七千―八千発が実戦配備されていると推測されています。うち六千四百八十発が戦略核弾頭。ミニットマンIII型五百基、XP型五十基の計五百五十基の大陸間弾道ミサイル(ICBM)に千七百発、十八隻の原子力潜水艦には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)四百三十二基が配備され、三千百二十発の核弾頭が装着されています。

 B52型およびB2型長距離爆撃機百十五機には核弾頭千六百六十発が配備されています。

 このほか核爆弾やトマホークに搭載された非戦略核弾頭は千六百七十発と推定されてます。核兵器の総爆発力は実戦配備されているものだけでTNT火薬換算千八百メガトンと推定されます。

 米ロ両国は五月に配備中の戦略核弾頭を十年間で三分の一に削減するという戦略的攻撃戦力削減条約に調印しましたが、米国は弾頭を廃棄せずに「備蓄」する意向を表明しています。

ロ シ ア

 ロシアは一万八千発の核兵器を保有していると推定されますが、実戦配備されているのはうち八千四百発。このうち約五千発が戦略核弾頭です。ICBM七百六基に三千十一発の核弾頭が、原潜十四隻に二百三十二基のSLBMが搭載され、千七十二発の弾頭が装着されています。

 長距離爆撃機は七十八機、ミサイルや核爆弾八百六十八発が配備されています。

 戦術核兵器は三千四百発で対空ミサイル、戦闘爆撃機搭載や対潜機雷などです。

英  国

 英国は、約二百発の核兵器を保有しています。すべて戦略核弾頭で、トライデント型原子力潜水艦四隻に配備されています。核原潜は八発までの個別誘導再突入弾頭を装着できるトライデント型SLBMを搭載していますが、三弾頭に削減されており、原潜一隻には四十八発の核弾頭が搭載されています。四隻の原潜のうち一隻がパトロールを行っています。総爆発力は五十五・五メガトン。英国は九八年までに戦術核兵器廃絶を完了しています。

フランス

 フランスは、約三百五十発の核兵器を保有。すべてが戦略核兵器で、このうち三隻の原潜に搭載された四十八基の中距離ミサイルには二百八十八発の核弾頭が装着されています。爆撃機八十四機(ミラージュ2000六十機、スペールエタンダール二十四機)には単核弾頭の六十基の巡航ミサイルが配備されています。

中   国

 中国は、約四百発の核兵器を保有。うち二百五十発が戦略核兵器で約二十発がICBMに、約百二十発が中距離ミサイルに搭載されています。またSLBM十二基を保有しているとみられます。

イ ン ド

 インドは最大核兵器九十五発分の核物質を保有していると推測、三十―三十五発の核兵器を保有していると推測されています。核攻撃に使用が可能な航空機、ミサイル技術を保有しています。

パキスタン

 パキスタンは最大核兵器五十二発分の核物質を保有し、二十四発から四十八発の核兵器を製造していると推測され、核攻撃に使用可能な航空機、ミサイル技術を持っています。

イスラエル

 イスラエルは百から二百発の核兵器を保有しているとみられています。また核攻撃に使用可能な爆撃機二百五十五機やミサイル百機を保有。

核疑惑国

 北朝鮮は一ないし二発の核爆弾を製造可能な核物質を保有していると推定されています。イラクは七〇年代に核兵器製造計画を開始し、その後、湾岸戦争や国連の査察のなかで計画は中断されたといわれます。イランは外国の援助を受けて独自の核兵器製造能力を探求しているといわれます。リビアも七〇年代に中国から核兵器を購入しようとしたといわれます。

核兵器の束縛
脱出した諸国

 南アフリカ共和国は一九七九年以降に六発の核兵器を製造しましたが、白人優越政権の崩壊、アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃の流れの中で九一年に核兵器計画を中止、九三年に公表しました。

 ブラジルは九〇年に核兵器計画放棄を公表、ミサイル計画も放棄しました。アルゼンチンも軍事政権下で行われてきた核兵器計画を八三年に終結、核兵器に使用可能なプルトニウム製造も停止し、ミサイル計画も放棄しました。

 ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンはソ連崩壊後、自国内に配備されていた核兵器を九六年までにロシアに移管しています。

図



保有国は廃絶の「明確な約束」果たせ

国際世論 新たな流れ

 二十世紀最後の年二〇〇〇年にニューヨークで行われた核不拡散条約(NPT)再検討会議は、最終文書に「核兵器国は自国の核戦力の完全廃絶を達成する」ことを「明確に約束する」との文言が盛り込まれました。

 その背景には、核兵器廃絶を求める国際世論を背景にした非同盟諸国やスウェーデンなどの中堅国家のグループ「新アジェンダ連合」の粘り強い外交努力がありました。

 ブッシュ米政権の核兵器固執政策が強まる中で、この「約束」履行への歩みは停滞しています。しかし、昨年の国連総会では、非同盟諸国、新アジェンダ連合が提案した核廃絶のための交渉開始を求める決議や非核兵器諸国への核攻撃を禁止する決議が圧倒的多数の賛成で採択されるなど、核兵器廃絶を求める動きは国際世論の上でも、国家の数の上でも多数派となっています。

 核兵器保有国内での核兵器廃絶を訴える運動も起きています。米国ニューヨークで六月に核廃絶を求める運動を再活性化するための集会が開かれ、年末までに百万人の署名を集めることが提起されています。インドでも「インド核軍縮運動」が印パ間の核戦争の危険を減らすための提案を行っています。

 


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