2002年8月1日(木)「しんぶん赤旗」
百五十日プラス延長分四十二日、合計百九十二日間の第百五十四通常国会が三十一日閉幕しました。アフガニスタン復興支援国際会議からのNGO(非政府組織)排除問題にはじまり、「ムネオハウス」に象徴される鈴木宗男議員の疑惑をめぐる与野党の攻防、公共事業にまつわる数々の口利き疑惑、外務省、防衛庁で続発した不祥事――。今国会はどんな国会だったのか、数字が雄弁に語っています。
昨年四月の内閣発足以来、マスコミ各社の世論調査で七〜八割の高支持率を保っていた小泉内閣ですが、通常国会さなかに急落し、支持率が半減。六月に「支持」と「不支持」が逆転しました。
小泉首相は一月末、アフガニスタン復興支援国際会議からのNGO排除問題で、田中真紀子外相を「国会審議の混乱」を理由に更迭。これを契機に内閣支持率は五割台に急落、その後も低迷を続けました。
背景には、鈴木疑惑、加藤疑惑をはじめとする底知れない腐敗事件への無反省、医療改悪法の強行に象徴される国民への痛みの押しつけ、景気・雇用をいっそう悪化させた経済失政、主体性・自主性のない外交への国民の不満、批判があります。
小泉内閣が提出した法案は百六本(継続法案を含む)。うち成立したのは九十一本、成立率83・96%でした。
自民、公明、保守の三党連立政権が誕生した二〇〇〇年の百四十七通常国会(六月二日衆院解散)が百六本中九十七本(91・51%)。二〇〇一年の百五十一国会(六月二十九日会期末)が百本中九十三本(93・00%)。四十二日間もの大幅会期延長をしながら、今国会の法案成立の低さは際立っています。
しかも、成立しなかった法案の中には、内閣と与党が最重要法案と位置付けた、有事関連三法案、「個人情報保護」法案などが含まれています。国民の運動と野党共闘に包囲され、統治能力を失った小泉内閣の現状を象徴しています。
小泉首相は施政方針演説(二月四日)で、「構造改革」の看板として「不良債権処理」に積極的に取り組むことを掲げました。しかし、大手十二行の不良債権残高は約十八兆円(二〇〇一年三月)から、一年間で二十六兆八千億円へと、49%も増加しました。小泉「構造改革」路線の破たんはいよいよ明りょうです。
小泉内閣の経済失政は、空前の失業増と企業倒産の増加をもたらしました。完全失業率は内閣発足前(二〇〇一年三月)の4・7%から一気に5%台にはねあがり、倒産件数は一〜六月平均が千六百二十三件と昨年の同期を上回っています。
「政治とカネ」をめぐる疑惑が、噴出しました。議員辞職は三人、辞任三人、離党三人(重複あり)。このほかに田中真紀子衆院議員が秘書給与問題で自民党員資格停止処分を受けています。一国会で三人の議員が疑惑がらみで辞職した例は、ありません。
「ムネオハウス」など一連の「北方四島」支援事業の入札介入疑惑が指摘された鈴木宗男衆院議員は、六月十九日にあっせん収賄容疑で逮捕。加藤紘一衆院議員(元自民党幹事長)は、前事務所代表の口利き疑惑で四月八日に議員を辞職。参院では井上裕議長が秘書の口利き疑惑で五月二日に議員辞職するという前代未聞の事態に。
小泉首相は「出処進退は本人が判断すべき」と繰り返すばかりでした。
「政治とカネ」の問題の象徴、「ムネオ疑惑」追及で光ったのが、日本共産党の調査活動と国会論戦でした。
二月十三日の衆院予算委員会で、佐々木憲昭衆院議員が「ムネオハウス」の問題をとりあげて以降、マスコミから佐々木氏への出演依頼、取材が殺到しました。
テレビの生出演は四十八回、ラジオの生出演は七回、雑誌の取材は三十四回、新聞・通信社からは四十六回、合計百三十五回に及びました。
機密費問題では、志位和夫委員長が官房機密費の詳細な使途を内部文書にもとづいて暴露(四月十二日)し、大きな衝撃を与えました。終盤国会では、小池晃参院議員が、宮路和明厚生労働副大臣の入試口利き疑惑を追及し、会期末ぎりぎりまで与党を追い詰めました。
「医療改悪反対、有事法制は許さない」
二月五日から全労連が始めた国会前座り込みは、中央社保協や国民大運動実行委員会、「有事法制は許さない! 運動推進連絡センター」が合流し、十八次にわたりました。
国会行動で提出された署名は約七百万人分。「医療改悪反対」は、日本医師会や連合が集めた分と合わせ、二千七百万を超えました。国民の五人に一人が署名した計算です。
「医療改悪やめさせたいと、やむにやまれぬ思いで初めて来ました。こんなにたくさんの仲間がいることに励まされた」(大分・宇佐病院看護師の田椽典子さん)など、初参加が目立ったのも特徴的でした。
連合や全建総連も「医療保険改悪反対」などを掲げて座り込みました。全日本視覚障害者協議会(全視協)は、「第三種、第四種郵便を守れ」などを求め、七月十七日から連日、夜遅くまで座り続け、国会審議のゆくえを見守りました。
今国会で野党が共同で衆参両院に提出した法案は十三本。昨年の通常国会の七本を上回りました。
月二回の四野党政策責任者会議などを通じて、各党の基本政策の違いを前提にしながらも、国民の切実な願いにこたえるため、政策的一致点の追求を誠実に努力した結果です。
食肉業界、生産農家などに深刻な被害をもたらしたBSE(牛海綿状脳症)の問題では、四野党が二月に法案を提出。法案成立をめざして関係団体と協力、百万人の署名を集めるなか、与党も四月に法案をまとめ、与野党協議の結果、農水委員長提案として全会一致で成立しました。
他方、成立にはいたりませんでしたが、「政治とカネ」の問題で口利き政治を根絶するための「あっせん利得処罰法改正案」や、公共事業受注企業からの献金を禁止する「政治資金規正法改正案」なども提出しました。
昨年に続いて四野党共同での予算組み替え要求や、内閣官房機密費問題での予算の執行停止と全容解明を求める申し入れなども共同で行い、会期末には小泉内閣不信任決議案(衆)、問責決議案(参)を共同提出しました。
小泉純一郎首相が田中真紀子外相を更迭(29日)
佐々木憲昭衆院議員が鈴木宗男議員の「ムネオハウス」疑惑などを追及(13日)
鈴木議員を証人喚問(11日)
志位和夫委員長が官房機密費の詳細な使途を示す内部文書を公表(12日)
中国・瀋陽総領事館事件発生(9日)
防衛庁の情報公開請求者リスト問題が発覚(28日)
鈴木議員逮捕(19日)
小池晃参院議員が宮路和明厚生労働副大臣の入試口利き疑惑を追及(11日)