日本共産党

2002年7月25日(木)「しんぶん赤旗」

主張

パート労働

均等待遇にはほど遠く


 パート労働者と正社員との均衡待遇について、厚生労働省の研究会が最終報告を出しました。

 パート労働者の待遇改善どころか、正社員の処遇を切り下げて「均衡」をはかろうとするもので、全労働者にかかわる重大な問題を含んでいます。

正社員の処遇切り下げ

 パート労働法が施行されて九年がたちますが、千二百万人にものぼるパート労働者の待遇は依然として劣悪です。とくに女性パートの平均時給は八百九十円と、千円にもなりません。正社員との賃金格差は「拡大傾向」にあります。

 パート労働者の待遇改善や、正社員との均等待遇は、切実な課題となっています。

 しかし、報告は、パート等の働き方の拡大をさらにすすめる立場から、部分的な「パートの処遇改善」ではなく、正社員の働き方・処遇も含めた「雇用システム全体」の見直しを提起しています。

 見直しの一つの方向が、残業や配転が少ない基幹的な仕事をする正社員と基幹的パートを同じ雇用保障・処遇にする「中間形態」の形成です。

 すでに大企業各社では、こうした方向がすすんでいます。

 松下電器では「地域限定社員」など「転勤のない正社員制度」をもうけて賃金の大幅切り下げをすすめています。NTTの大リストラ攻撃も、全国的配転が嫌なら分社に移り、賃金の三割カットを受け入れよというものでした。

 これらは、もともと全国的配転などなかった現業労働者を「配転の可能性」で脅し、賃下げだけを迫る、きわめて不当なものです。

 報告は、パート労働者の低賃金と差別のしくみは温存し、「中間形態」「多様な働き方」と称して正社員の処遇を切り下げる一方、いっそうの戦力化をはかる基幹的パートとの「行き来」の仕組みをつくろうというものです。

 これは、同一労働同一賃金原則でパートを処遇するヨーロッパ、EUなどのルールは、日本の労働事情にはあわない、「均衡」さえとれればいい、として「日本型均衡処遇ルール」なるものの確立を求めていることからも明らかです。

 その内容は、サービス残業、長時間・過密労働におかれている日本の正社員の労働実態を前提に、正社員とパートとの「合理的な差を設けることもあり得る」というものです。

 また、同じ職務の場合は処遇の決定方式をあわせるが、「どのように評価・処遇するかは企業のルールに委ねる」というのですから、これでは処遇改善の実効性など期待できないでしょう。

 世界は、パートとフルタイム労働者との均等待遇の原則の確立に大きく動いています。そのときに、正規労働者の処遇の切り下げで「均衡」をはかろうなどというのは世界の流れにも逆行するものです。

世界の流れに逆行

 パート労働者が求めているのは、雇用の継続と安定です。独立した人格をもつ労働者にふさわしい賃金、待遇の保障、格差の是正です。

 いま必要なのはフルタイム労働者と同等の条件を保障するILOパートタイム労働に関する条約の批准、現行パート労働法の実効ある改正をはかることです。

 正社員は残業や転勤を強制されて当たり前という労働実態をおしつけるのでなく、だれもが人間らしく働けるよう、労働者保護法の整備をはかることです。

 


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