2002年7月22日(月)「しんぶん赤旗」
政府・与党は、医療改悪法案を二十五日にも参院厚生労働委員会で強行採決しようとねらっています。しかし、論戦を通じて、国民負担増がいっそうの保険財政悪化をもたらすという“悪循環”が明らかになっています。きっぱりと廃案にするしかありません。
改悪法案はサラリーマンなどの患者三割負担、保険料値上げ、七十歳以上の一割負担(一定以上の所得者は二割)徹底が主な内容です。保険財政の赤字対策のため、医療費削減効果のある患者負担増が必要だというのがその理由です。
しかし、実際には受診抑制でかえって医療費の増加をまねくことになります。
日本能率協会総合研究所が高血圧の患者を対象に行ったアンケートでは、自己負担が増えれば「通院回数を減らす」と答えた人が33%にのぼりました。患者負担が二割に上がった九七年の医療改悪のあと、三十五〜六十四歳の患者は三十五万人も減りました(厚生労働省の患者調査)。
自己負担の引き上げで病院に行くのを我慢すれば、病気の重症化をまねいて医療費が増大し、保険財政の悪化となってはね返ることになります。
法案による負担増は一兆五千億円にも及び、リストラと合わせて経済全体に悪影響を与えます。それがまた、医療保険財政の基盤を崩すことになります。
政府管掌健康保険ではリストラや賃下げで、保険の加入者数と保険料収入が九八年から連続して減少しています。保険料や窓口負担の引き上げについては、竹中平蔵経済財政担当相も「短期的には消費がマイナスの影響を受ける」と認めました(十八日、参院財政金融委員会)。
負担増は年金、介護などでも予定され、〇三年度は全体で三兆二千四百億円(志位和夫委員長が党首討論で指摘)にも及びます。この影響について問われても、小泉純一郎首相には経済への深刻な打撃という認識がまったくありません。
日本共産党は、こうした悪循環を断ち切る医療問題の解決の道として、国が減らし続けてきた医療費への国庫負担の割合を元に戻すことや、高すぎる薬価にメスを入れることを提案しています。
日本医師会の代表は参考人質疑で「いくらでも公費を補う道は残されている」(桜井秀也常任理事、十六日の参院厚生労働委員会)と発言。与党議員も、薬価問題について「(製薬会社は)ソニーやトヨタの三倍くらい株主に配当している。もうけがありすぎて困るという感じすらする」(十八日、自民党・田浦直議員)とのべ、高すぎる薬価を見直すべきだと指摘しています。