日本共産党

2002年7月21日(日)「しんぶん赤旗」

内湾閉め切った岡山・児島湖

4500億円かけても水質悪化改善せず


 岡山市南部の干拓事業で瀬戸内海の内湾を閉め切って造った児島湖(千八十八ヘクタール)が水質の悪化に悩んでいます。浄化対策に最近十五年間で四千五百億円を投入してきたものの改善されず、水門開放など抜本的な対策を求める声が最近強まってきました。同様に湾を閉め切って造った諌早湾干拓事業の調整池の将来を象徴する事例として注目されます。 (松橋隆司記者)

諫早干拓の行く末暗示

夏場はガス発生

 児島湾一帯は、大きな干潟が発達し、江戸時代から干拓されてきました。明治時代から湾内七千ヘクタールのうち五千五百ヘクタールの大規模干拓が開始され、一九六三年に完成しました。干拓地の農業用水確保のために残された千五百ヘクタールのうち約千ヘクタールを閉め切り、淡水の児島湖が一九六二年に誕生しました。

 児島湾は「戦後数年間はウナギ漁で家が建つ」といわれたほどの「宝の海」でした。しかし淡水化した後は、しだいに水質が悪化。「夏場はメタンガスが発生する。ボラはにおいがひどく食べられない」といわれるようになりました。

 水質の悪化で農業用水にも支障がでています。児島湖の水を使わざるを得ない地域にとっては、水質の浄化が切実な願いになっています。

図

 児島湖では、有機物の汚濁量を示すCOD(化学的酸素要求量)が一九七四年以降一リットル中一二〜九ミリグラムの間で推移。環境基準値(同五ミリグラム)のほぼ二倍の汚濁状況が続いています()。全国の湖沼ワーストランキングで三位になるなど毎年上位にランクされています。

水門開放をの声

 県も児島湖の浄化対策を県政の重点施策として多額の資金を投入してきました。水質保全計画は一九八六年から五年ごとに計画を立てて下水道の整備や浄化槽の設置などの対策を進めてきました。その第一期の事業費は八百五十六億円、二期千九百二十六億円、三期千六百九十八億円にのぼります。

 しかし水質は改善されず、児島湖の漁獲量も一九七一年の二千四十五トンをピークに年々減少しています。一九九八年には三百二十七トンとかつての七分の一まで減少しました。

 「岡山の緑と水と空気を守る連絡会」(小川洋会長)が実施した関係漁協の聞き取り調査によると、閉め切り堤防について「潮の流れが弱くなりさまざまな影響がでた。無いほうがよい」などと、ほとんどの漁協が堤防の悪影響を指摘し、漁協の多くが水門の開放を求めていることが分かりました。

 日本共産党の近藤さち子県議は議会で、水質保全計画の第一期から三期までで四千四百八十億円の「多額の資金を投入しながら一向に水質が改善されていない」と指摘。漁業者らが水門の開放を求めていることをあげて「早急に研究体制を立ち上げて、抜本的対策をとるべきだ」と県に求めています。


オランダの例参考に開門を

 岡山市在住で児島湖に詳しい奥田節夫・京都大学名誉教授の話 児島湖の水質悪化の対策は、まず児島湖に流入する水の浄化が重要であり、行政機関が下水道の整備など長期的な対応を進めています。しかしそれだけで十分とは到底考えられません。

 閉め切りによって湖水の滞留時間が長くなり、混合かくはん作用が弱くなると水質の劣化が始まります。したがって湖水の滞留時間を短縮し、混合かくはん作用を高めるために、オランダで見直されているように、水門を部分的に開放する案も一手法として早急に検討すべきでしょう。

 オランダではこのような計画の検討は広くEU諸国から専門家を集めて学会レベルで公開討論し、その結果を学会誌で発表しています。わが国でも広く公開された機関によって科学的な調査を行う心構えが必要でしょう。

 諌早干拓の調整池と児島湖とでは、規模も利用法も異なりますが、閉鎖的な河口湖の造成という点で共通の面が多く、児島湖の水質劣化の現状は諌早湾にも警告的現象として十分に反映させてもらいたいものです。

 


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