日本共産党

2002年7月19日(金)「しんぶん赤旗」

知事不信任強行

長野のダム推進派と企業

持ちつ持たれつ


 長野県議会で県政会(自民党と羽田孜議員系民主党)、政信会(自民党)、県民クラブ(公明党、民主党など)のダム推進派が、日本共産党の反対を押しきって強行した田中康夫長野県知事(失職)の不信任決議で、いま、ダム建設推進の県議とダム建設工事受注企業や建設業界との関係が注目されています。ダム工事発注の状況や政治資金収支報告書などから、異常な実態が浮かんできました。

浅川ダム、本命決定は5年前

予定価格ギリギリの落札

 驚くべき数字が並びます。長野県発注のダム本体工事で、工事予定価格にたいする落札価格の割合を示す落札率(表)。長野県のダムがつねに予定価格ギリギリで落札されてきたことを示しています。

 たとえば、余地ダム(佐久町)本体工事では、四十五億七千七百万円の予定価格に対して、落札額はわずか七百万円違いの四十五億七千万円。これほどの的中率は、予定価格を知り、談合をしない限り不可能です。

 本紙が入手したダム工事下請け大手の山崎建設の内部資料(二〇〇一年八月三十日付本紙報道)では、浅川ダム本体工事で、入札の五年前から落札する本命企業が決まっていたことが判明しました。

 ダム以外の長野県の公共工事でも予定価格の漏えいや「談合」の疑いが指摘されています。

 一九九八―二〇〇〇年度に県土木部が発注した測量、設計などの「委託業務」のうち、落札額が予定価格と同額の「落札率100%」のケースが八百五十九件もあることが、今年、県土木部監理課のまとめでわかりました。これは、委託業務全体の一割にもあたる数字。これほど落札率100%の事例があるとは驚くべき事態です。

受注企業から献金

自身が会社オーナー、親族に重役も

 他方、長野県議会をみましょう。

 一九九九年の長野県選管届け出の政治資金収支報告書を見ると、これらダムの本体工事を受注した建設会社から、県政会の複数の県議に政治献金がおこなわれていました。

 最大会派の県政会で、知事不信任決議の先頭に立った石田治一郎名誉団長(前議長、長野市、当選六回)がその筆頭です。

 石田県議は、JV(共同企業体)で浅川ダムを受注した県内最大手の北野建設や、水上ダムを受注した清水建設、余地ダムを受注した守谷商会など、ダムと関連事業の受注企業九社から、計百七十四万円の寄付を受けています。

 石田県議は一昨年の県議会では公共事業の見直しについて「反対が出るたびに事業を見直していたら、県政は完全に停滞する」などとのべていました。また、同県議の実弟は、浅川ダム本体工事を受注した北野建設の営業副本部長(取締役)でもあります。

 さらに、県政会の服部宏昭県議(上水内郡、大岡村)には、三社三十三万円。浅川ダムの下請け業者からも県議二人に献金がありました。

 ダム受注企業が加盟する県建設業協会も支部が県の政界に献金しています。佐藤良男(県政会、小県郡)、浜康幸(政信会、諏訪郡)、浜万亀彦(社会県民連合、岡谷市)の各県議に同協会支部から計五十万円が寄付されています。

 さらに、長野県の建設業界からの企業献金を調べると対象はもっと広がります。

 九九年分だけでも、県政会、政信会、県民クラブ、社会県民連合の県議にわたった企業献金は、四千万円を超えます。

 ダム推進派の県議には、そもそも自分自身や親族が建設会社のオーナーだったり、重役であるケースが少なくありません。例えば県政会の下崎保団長(更埴市)はもともと更埴市の「下崎建設」のオーナーです。


県政の流れ変わってきた

日本共産党 石坂県議団長語る

 日本共産党の石坂千穂県議団長は語ります。

 「県政会の県議たちは、土建業者なしには選挙がなりたたないほど関係が深い。集会を開けば土建業者を動員してビラまき、ポスターはりをさせ、寄付も受ける。前回知事選で県の土木部職員が大挙して建設業協会の会館にいき、三千本の“電話作戦”をするなど、政官業が一体をなして公共事業優先の県政をすすめてきました。ゼネコン体質や一兆六千億の借金を抱える閉塞(へいそく)感から県政が大きく変わろうとしたのが前回知事選でした。日本共産党は、公共事業見直しで選挙戦でも論戦をリードし、世論に訴える積み重ねをしてきました」


長野県営ダム・本体工事の落札率

 落札率は工事予定価格にたいする落札価格の比率。( )内は共同企業体の各企業名。年は入札を実施した年。

 金原ダム  99・45%
(大林組、東急建設、東信建設)1993年

 水上ダム  99・64%
(清水建設、松本土建)1994年

 北山ダム  99・46%
(西松建設、竹中土木、北野建設)1995年

 小仁熊ダム 99・54%
(佐藤工業、株木建設、吉川建設)1998年

 余地ダム  99・85%
(鹿島、大本組、守谷商会)2000年

 浅川ダム  96・32%
(前田建設工業、フジタ、北野建設)2000年


ダム受注企業から長野県議への献金

 県議選がおこなわれた99年分の政治資金収支報告書による。単位万円。受注はダム本体工事と道路付け替え工事など関連事業を含む

 ●石田治一郎(県政会)

 株木建設   6

 北野建設   48

 清水建設   12

 大成建設   12

 中部建設工業 12

 東急建設   12

 日特建設   12

 藤森建設工業 24

 守谷商会   36

 計      174

 ●服部宏昭(同)

 北野建設   8

 吉川建設   15

 鹿熊組    10

 計      33

 ●久保田元夫(同)

 中部建設工業 9.5

 


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