2002年7月17日(水)「しんぶん赤旗」
ただ働きをおしつける違法なサービス残業がまた是正されました。沖電気工業の関連会社、沖エアフォルク(本社・福島市)は、退勤時のタイムカードを打刻させず、サービス残業の温床をつくっていましたが、労働者有志が労働時間を自己管理する「残業日誌」運動をすすめ、会社の姿勢を改めさせました。(東北総局・矢野昌弘記者)
沖エアフォルクは一九九八年に東北沖電気から分社化した会社です。分社してからも「毎年リストラをやっているようなもの」と労働者から声があがるほど、「合理化」や賃下げを実施してきました。
九九年、会社は労働者一人あたり平均22%の賃下げを実施。さらに業務別賃金や成果賃金制度を導入し、時間外労働の割増率を引き下げました。
分社後は、退勤時のタイムカードの打刻をしないことに改め、自動的に「定時退社」したことにされました。昨年八月以降はさらに改悪され、残業は“職場能率”100%を達成した職場だけが残業申請をした上で、できることになりました。
この方針になってから、職場ではサービス残業がまん延し、とくに職制のサービス残業が連日のようになりました。
今年になってからは、賃下げを緩和していた調整給を段階的に削減し、労働者の暮らしはますます厳しくなっています。
こうしたなか、労働者のAさんは昨年十一月に福島労働基準監督署に相談にいきました。
労基署の監督官は「ひとり分でもいいから正確な勤務実態を知らせてほしい。そうすれば受けつけることができます」と回答しました。
Aさんはどうして正しい労働実態を伝えようかと考えている矢先、「しんぶん赤旗」で兵庫県の三菱電機労働者が「残業日誌」をつけて、ただ働きをなくそうとよびかけている活動を報じた記事(〇一年十二月七日付)を目にしました。
「これだ」。Aさんはワープロで「残業日誌」を作成。まわりの労働者に呼びかけて、一月から日誌をつけました。
Aさんは、時間外手当の算出方法を書いた用紙をつくり、協力してくれた人に給料明細に書かれた時間外手当の額を書いてもらいました。
「残業日誌」をつけた結果、多い人では六十時間に相当する八万円分のただ働きの実態が明らかになりました。
三月、Aさんは福島労基署に再び申告。同労基署は沖エアフォルクに対して、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき基準」として昨年四月の厚生労働省通達をもとに指導しました。
沖エアフォルクは四月十一日に通知を出し(1)タイムカードの打刻を退勤時にも行う(2)一時間未満を端数として切り捨てた残業時間を十五分単位で算定し、昨年十月分にさかのぼって時間外手当を支給する―としました。
一定の改善がありましたが、Aさんは「会社の方針に従って残業時間を記録しなかった職場では恩恵を受けることができませんでした。改善を命じられた後もタイムカードを押してから残業をさせる職場が今もあり、経営陣は今回の指導を真剣に受けとめてほしい。会社の違法行為をただすため、『残業日誌』を続けたい」と話します。