2002年7月17日(水)「しんぶん赤旗」
過労死防止・サービス残業排除のため、大企業の人事担当責任者にたいし中央労働基準監督署が十五日、東京都で行った説明会では、監督指導によって改善された事例が報告されました。そのうちのいくつかを紹介します。
自己申告制によって労働時間を把握していたA会社本社(千人以上、全社一万人以上)は、客観的な労働時間の記録(社内システムの履歴や入退館記録簿等)と合致しませんでした。
指導を受けた会社が調査をすると、ほとんどが労働時間だったことがわかり、支店でも調査を実施すると未払い事実があったため、労働組合からも意見をきき、総額数億円を支払いました。同時に、三六協定の順守・徹底や所属長が残業時間を確認することなどを社内通達で徹底しました。
B会社本社(千人以上、全社一万人以上)は、会社把握の勤務時間と客観的な労働時間の記録は合致していましたが、七百人以上が年間残業三百六十時間を超えており、うち十人は千八十時間超の異常な長時間残業を行っていることが明らかになりました。
社長が部門長あてに是正勧告内容や長時間労働の改善を要請し、企業倫理委員会でとりくみを開始。人事部が定期的な確認を行い、時間管理を管理職の評価に反映することをきめました。時間外労働が三カ月平均で月七十時間以上の長時間労働者は特別健康診断を実施し、医師の所見をもとに時間外労働時間数の上限を設定するなど改善をはかりました。
残業代の定額払い=擬似裁量労働=制を行っていたC会社本社(本社社員五百〜千人)は、社内調査から定額払いを超えた労働があることが判明し、数千万円を支払いました。さらに、定額払い制を変更して、日々の労働時間を把握した実績払いに改善しました。
同社は当初、取締役名の報告書で、賃金台帳への労働時間の記入等以外は「すべて適正に実施」していると回答してきましたが、社長名の報告書を求めたところ前記のような改善がはかられました。
C会社本社(本社社員三百〜五百人)は、労基法四一条の管理・監督者とする管理職が60・7%(全社58・3%)を占め、残業代を支払わずにきました。法にのっとった管理・監督者の範囲を検討するよう指導を受け、管理職の範囲を29・4%(27・0%)に縮小するとともに、これまでの未払い残業分を清算しました。