2002年7月17日(水)「しんぶん赤旗」
「あの問題は、タブーだから共産党しかできない。勇気ある質問だ」――。十日の参院予算委員会で、BSE(牛海綿状脳症)対策の国産牛肉買い上げ事業問題を取り上げた日本共産党の富樫練三議員に、自民党議員が近寄りこう語りました。自民党議員も感心する「勇気」。それは、買い上げ事業を食い物にする“ヤミ勢力”とのたたかい抜きには語れません。
質問で富樫氏は、買い上げ事業で全国食肉事業協同組合連合会(全肉連)が、申請企業名を公表していないことや、まともな検査なしに助成金が支払われている事実を指摘。その不透明さを示す実例として、大阪の食肉卸売り業者「ハンナン」グループが大阪分の買い上げのすべてに関与していることを追及しました。
業界最大手の同グループ“総帥”の浅田満氏は、大阪府同和食肉事業協同組合連合会(府同食)の会長や、大阪府食肉事業協同組合連合会の副会長を務めるなど、食肉業界に絶大な影響力を持つ人物。府同食顧問の山口公男氏は、元「解同」大阪府連副委員長です。
浅田氏は、牛肉輸入自由化前の一九八七年、輸入牛肉の割り当て枠をめぐる畜産振興事業団部長への贈賄で逮捕されたこともあります。当時、浅田氏がひきいていた全国同和食肉事業協同組合連合会は、贈賄工作で割り当ての調整枠を大きくふくらませたことが明らかになりました。
大阪の全国紙デスクは、浅田氏の“実力者”ぶりをこう指摘します。
「『ハンナン』グループの影響は多方面に及んでいる。その力の背景にあるのが同和や政治家の存在だ。農水省も買い上げ事業のことで浅田氏に関わることを聞くと顔色が変わる。それだけに、そのタブーにメスを入れた共産党はさすがだ。これ抜きには、買い上げ事業をめぐる疑惑は解明できない」
「解同」は、批判者や意にそわない者を「糾弾会」でつるしあげるなど、暴力的どう喝で利権をむさぼってきました。そうしたなかでマスコミや行政機関には、「同和利権」に関わる勢力を極度に恐れる「タブー」があるのです。
浅田氏は、鈴木宗男被告の大スポンサーになるなど、政界との太いパイプをもっています。
鈴木被告と浅田氏との親密な関係をいち早く報じたのは、「しんぶん赤旗」でした。さらに、買い上げ事業で、畜産族議員でもある鈴木被告と「ハンナン」の関係をとりあげ、買い上げの不自然な実態を最初に指摘したのも本紙でした。
本紙三月十七日付で、鈴木被告の使用している高級車が「ハンナン」関連企業名義であることをスクープ。これが反響をよび、その後の「毎日」「朝日」の報道で、同関連企業による自動車税肩代わりや、顧問料支払いなどが明るみに出ました。しかし、これら「毎日」「朝日」報道でも、「大手食肉業者」としか書かれておらず、「ハンナン」や浅田氏の名前は出ていませんでした。
“ヤミ勢力”との、日本共産党のたたかいは一貫しています。
大阪・羽曳野市の日本共産党員首長・津田一朗民主市政を転覆し、現自民党市政をつくるために暗躍したのが、同市を拠点とする「ハンナン」グループでした。地元の日本共産党は、同グループ企業と福谷剛蔵市長の癒着を市議会でたびたび取り上げ追及してきました。府議会では、太田房江知事が浅田氏の豪邸で宴会を開いたことなど、癒着ぶりを指摘しています。
「市民の利益のためには、どんなタブーも恐れない」。日本共産党の誇りある伝統です。
BSE関連の牛肉買い上げ事業では、ハンナンとともに名古屋市に拠点を置く同和系の業者(フジチクグループ)の存在が指摘され、「買い上げ数量は大阪、愛知が突出。……二つの食肉業者と鈴木宗男・松岡利勝両議員との関連を指摘する声が消えない」(『アエラ』七月八日号)と報道されています。しかし、ここでも背景にある「解同」タブーには触れられていません。
富樫氏の質問に感激したという福岡の自民党支持者の男性は、こんな激励の電話を共産党本部に寄せました。「私は中小企業のオヤジで、あぶら汗をかきながら働いているのに(買い取り事業の悪用は)とんでもない。小泉首相に期待したこともあったが、自民党ではだめだ。このような追及は共産党しかできない。がんばってほしい」