2002年7月13日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の新しい本部ビルの第一期工事が完成し、十五日に引き渡し式が行われます。これを前に東京芸術座所属俳優の石津真奈美さんが訪ね、新しいビルの特徴、建設にあたっての工夫や苦労について、建設委員会責任者の上田耕一郎副委員長に聞きました。
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石津 きょう新しいビルを拝見してびっくりしました。すごくきれいで、眺めもよくて、すてきな建物ですね。
上田 ありがとうございます。新しい本部ビルの設計は、地域建築空間研究所所長の小林良雄さんにご苦労いただきました。千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館の設計にもたずさわった方です。おかげで、親しまれやすい、明るい建物ができました。
公募入札で建築工事は戸田建設、電気設備は弘電社、機械設備は大氣社にしてもらっています。
石津 窓が大きく、光がサンサンと入って、本当に“開かれてる”という感じがしました。診療所もありますが、一般の方も入れるのですか?
上田 二階の診療所は保険診療のできる診療所ですから、どなたでも利用できます。
見学したい方は、執務室や最上階の十一階、食堂、会議室などにご案内しますよ。今月十九日から二十一日までの三日間、党員や後援会員をはじめ、選挙や日常の諸活動で日本共産党にご協力いただいている方々、建設募金に応募された方々などへの本部ビル公開もおこないます。
七月にできる一期棟は、十一階建て、高さ約五十一メートルです。これから建てる二期棟は八階建て、高さ三十三メートルです。一階はエントランスホールになっていて、展示コーナー、ビデオ視聴コーナーなど、みなさんに使っていただけます。三階から五階は五百人収容の大会議室です。全部バリアフリーになっていますし、障害者用のトイレもあります。
石津 大きな工事ですから、当然、地域の方々との関係は重視されたんでしょうね。
上田 はい。共産党本部が近隣の人から支持されないようでは大変ですから(笑い)。ご近所、四百軒くらいを一軒一軒訪ねて案内し、何回も説明会を開いてご意見を聞きました。住民の方々は「いい党本部をつくってください」と大変協力的でした。
一つ、英断をくだしたことは、代々木駅からの千駄ケ谷大通りにある本部周辺の商店街、「明店街」というのですが、そこのみなさんから、「商売に影響するので工期を短くしてほしい」「トラックは通さないでほしい」という要望書が出されたんです。そこで、工事の間にトラックがどのくらい通るか調べたら、のべ二千台にもなることがわかった。代々木駅から来る途中の踏切は一日百回以上開閉し、自動車の渋滞もおこる。これはもう「明店街」の要望どおり、トラックは全部、反対側になる明治通りからだけの出入りにしようと決めました。そのために、さらに現本部の三分の一を切り落とす改修工事から始めたんです。
石津 わあ…すごい。
上田 工期も三期五〜六年の計画を、二期四年に短縮しました。計画変更は大変でしたが、工期が短くなれば費用もそれだけ少なくなりますから、私たちもよかったと思っているんです。
商店街の方々からは「要求を全部のんでくれた。さすが共産党だ」と大変喜ばれました。
石津 建物もいろいろ地域のことを考えて…。
上田 みなさんが通行しやすいよう道路から三メートル下げて建てるよう工夫しました。四階、六階のテラスには季節ごとの植物を植え、二期工事では街路樹も植えて町に潤いをもたらしたいと思っています。
また、地下に二百五十立方メートルの貯水槽があって、災害時にはこの水の半分で一千世帯に六日間、水を供給できるんです。もう一つは、消火用の百立方メートルの水槽で、これも災害時はご近所のためにも使えます。二つの水槽を合わせると、千駄ケ谷かいわいで最大の貯水量です。
配水管などがさびない最新設備を使い、水質もかなり改善しています。
石津 災害時に党本部が地域の拠点になれるなんて、すごい発想ですね。防災面の対策はどうでしょう。
上田 もともと阪神・淡路大震災のあと「倒壊の危険あり」という耐震診断で始めた工事なので安全は最優先です。地震にたえる安全係数は、一・二五倍とってあります。
建物は純鉄骨構造で、円い柱を使っています。円柱はあらゆる方向の振動にたいして最も安全だというんです。とても堅固な構造なので戸田建設の作業員もびっくりして、「これなら二十階でも大丈夫だ」(笑い)という声が出たくらいです。
防災センターの役割を果たす「中央管理センター」も設けており、安全性は太鼓判を押せる建物です。
石津 円い柱はデザインではなく安全のためだったんですね。最新技術をいろいろ駆使されていますが、IT化など情報処理の面でも工夫があるのですか?
上田 政党本部ですから、なにもかもオートメーション化にはしませんが、これまで、個人個人がバラバラに使ってきたパソコンなどは、この機会にコンピューターのネットワークをつくり、全体として統一的な管理ができ、データの保存やセキュリティー(安全性)も確保できるようにします。ウイルスの侵入や事故などは防がなければなりませんから、専門家の力を借りてシステムを確立します。
石津 省エネの工夫はどうでしょう。
上田 なるべく簡素で節約型の努力をはらっています。「氷蓄熱方式」を採用しました。夜の電力料金は、昼間の五分の一とすごく安いので、夜の電力を使って氷をつくり、それを溶かして夏は冷房に使うというやり方です。
石津 氷を使って効率よくってわけですね。
上田 天井はシステム天井で、蛍光灯に二種類のセンサーが入っています。一つは「照度センサー」。昼間は太陽光があって明るいので蛍光灯は暗くていい、逆に夜は明るく、これを自動調節し、昼夜だいたい同じ照度を保つというものです。
もう一つは、「人感センサー」で、同じ部屋でも、蛍光灯の下から人がいなくなると自動的に暗くなり、電気の無駄を省くことができます。
石津 これだけの大事業ですから、費用も大変だと思うのですが、日本共産党は、政党助成金も企業献金もいっさい受けとらない政党ですよね。資金はどうされたのでしょう。
上田 私たちは憲法違反の政党助成金はもとより、企業・団体献金もいっさいいただきません。そういうものがなくても、党員と支持者の方々の力でちゃんと活動できるし、この建物もそれを証明する一つです。
建設予算は八十五億円で、備蓄もありましたが、第一次募金として二十五億円を募りました。巨額なので最初は心配しましたが、おかげさまでたくさんの方々のご協力で超過達成することができました。
募金してくださった方の名前を銘板に刻んでカプセルに入れ、ビルの基底部に保存することにしましたら、これも反響をよびました。亡くなった夫と夫妻で名前を並べてほしいという方もあります。
石津 全国のみなさんの熱い思いが集まっているんですね。
上田 日本共産党はこの七月十五日に党創立八十周年を迎えますが、本部ビルには八十年間の党のたたかいが刻み込まれているんです。
日本共産党はこの間の「大運動」で、四十万人を超える党員、二百万人ちかい「しんぶん赤旗」読者という、サミット参加国の共産党のなかで最大の勢力になりました。もちろんこれに満足せず、二十一世紀に民主連合政府をつくるためにたたかう決意であり、日本の政治革新をめざす大事なとりでがこの新ビルです。
石津 ほんとに素晴らしい建物が完成するときが楽しみです。
上田 これから、二〇〇四年九月竣工(しゅんこう)予定で二期棟の建設にかかります。これまでどおり事故のないよう努力しますが、この機会にこれまでご協力いただいた多くの方々に心からのお礼を申し上げたいと思います。