2002年7月5日(金)「しんぶん赤旗」
日本共産党の井上美代議員は四日の参院厚生労働委員会で、医療改悪法案がお年寄りをどれほど苦しめるのかと怒りを込め政府を追及しました。
井上美代議員 昨年一月からのお年寄りの定率一割負担で(政府は)「月額の上限を置いて無理のない範囲でお願いした」と言っていた。今回、上限を大幅にアップするのは「無理を承知で負担を求める」ということか。
坂口力厚労相 過去にはいろいろな言をした経緯があったかもしれない。
今回の改悪法案は、七十歳以上にたいし、通院の場合、いま月三千二百円(大病院は五千三百円)となっている一カ月ごとの自己負担上限額を引き上げ、一般で月一万二千円、低所得者でも八千円にします。
いまの上限額導入は昨年一月からです。にもかかわらず、「過去にはいろいろな発言があった」と弁解する坂口厚労相に対し、井上議員は「ずっと前のことではない!」。「低所得の人にも無理のない範囲だと考えているのか」と重ねて質問しました。
しかし厚労相は「現役と高齢者のバランスも考えなければならない」などとのべ、温かみのある言葉は一言も聞かれませんでした。
井上議員 遺族年金と障害者手当で月八万四千円の収入だけという東京の一人暮らしの女性は、食費は一日千円と決めてやっている。医療費の負担が増やされたら食費を削るしかないといっていた。こんな人のことを考えているのか。
坂口厚労相 医療、介護、トータルで抑制する制度をつくっていきたい。
あくまで「低所得者に配慮している法案」と言い張る坂口厚労相に井上議員は低所得者の実態を示しました。井上義員が話をきいた女性は、食費、家賃、介護・医療費負担などを除くと、手元に残るお金はほとんどありません。政府の「国民生活基礎調査」では、所得も金融資産も二百万円未満という高齢者世帯は全体の25%にのぼることも紹介。井上議員は、負担上限額を引き上げることが「どんなに大きいことか考えなければならない」と訴えました。
坂口厚労相は、法案が通れば、介護や医療の患者負担を合計して抑制する仕組みを今後検討することになると説明。高齢者のなかには「所得が少なくても子どもの仕送りで暮らしている人もいる」と弁解すると、傍聴席に失笑がもれました。
大塚義治保険局長 七十歳以上の医療費へのシェア(国庫負担割合)は、いずれも33・4%だ。
井上議員 国庫負担は下がったまま変わらないということではないか。
法案が通れば老人医療制度(七十五歳以上)への公費負担(地方を含む)を、三割から五割に引き上げるという政府。井上議員は現行制度の対象となっている七十歳以上で見るとどうなるのかと質問しました。
法案は、公費負担の対象を七十五歳以上に引き上げたうえで、五割にするというものです。井上議員への答弁で、七十歳以上の医療費全体で見ると、二〇〇七年度の段階では現行のままでも制度「改正」しても33・4%で国の負担割合は変わらないことがわかりました。
しかもこの間、老人医療費への国庫負担割合は減らされてきています。一九八三年に44・8%だったのが九九年には34・4%と答弁しました。
井上議員は「国庫負担は下がったままで患者負担が強いられることになる。国庫負担を計画的に元に戻すべきだ」と強く求めました。
坂口厚労相は、「国庫負担を増やすことは国民に税でお願いすることだ。そんなことは許されるのか」と拒否。税金の使い方を切り替えて社会保障の財源を確保するという問題提起を、国民に増税を求めているかのように問題にすりかえて、聞かれていることへの答弁を回避しました。