日本共産党

2002年7月2日(火)「しんぶん赤旗」

政府管掌健康保険

「赤字になったら国の負担を元に戻す」

政府は公約投げ捨てた

つけは国民にまわす

国庫負担引き上げよ


 「赤字になったら元に戻します」――十年前、政府はこう言って政府管掌健康保険(政管健保)への国の負担を減らしました。ところが、保険財政の赤字が深刻になった今も国庫負担はそのまま。約束を破ったうえ、今度は「保険財政が厳しい」ことを理由に、三割負担を導入する医療改悪法案を提出、国民の反対を押しきってでも成立させようとしています。

 健康保険のうち、主に中小企業で働く人が加入するのが政管健保です。サラリーマン本人の場合、かかった医療費の二割を患者が負担し、残り八割は保険から給付されます。国の負担は、この保険給付費の13%です。

 もともと、国の負担率は健康保険法の本則で「16・4%から20%の範囲内」と決められています。政府は九二年に、それまでは16・4%だった国庫負担率を改悪し、法律の付則で13%に引き下げました。

「引下げても財政大丈夫」

 引き下げの理由は、保険財政が黒字だからというものでした。当時、国会ではこの問題に議論が集中しました。厚生省の黒木武弘保険局長(当時)は、政管健保の黒字が年に三千五百億円程度、積立金も一兆四千億円に達していると説明。「国庫補助率を引き下げても財政は大丈夫」と、繰り返し“安全性”を強調しました。

 さらに「財政状況が悪化した場合には国庫負担率を元に戻すのか」との問いに、山下徳夫厚相(当時)は「指摘の趣旨も踏まえ検討したい」(九二年三月十日、衆院厚生委員会)と答弁。黒木局長も「万一、財政状況が悪化した場合は、必要に応じて国庫補助の復元について検討させていただく」(同)と約束しました。

 健保法には「財政運営の状況等を勘案し、必要があると認めるときは」、国の負担割合について「検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」との付則が盛り込まれました。

 「財政が悪化したら国の負担を元に戻す」というのは、法律にも明記された政府の公約です。

翌年には赤字「危機を強調」

 政府が「大丈夫だ」と太鼓判を押した政管健保の財政ですが、国庫負担を引き下げた翌年(九三年度)には、一転して赤字に転落。それ以降、毎年赤字が続き、二〇〇二年度予算(医療分)では六千三百億円の赤字が見込まれています。

 政府・与党は、改悪法案を通すため、“この赤字をなんとかしなければならない。積立金も底をつく”と財政危機を強調。「赤字解消」のための保険料大幅引き上げか、それとも三割負担導入で医療費を減らして保険料の引き上げを抑制するのか、どちらを選ぶかが問題だとして、三割負担をお願いすることにしたと主張しています。

 しかし改悪法案は、政管健保の保険料率を年収の7・5%から8・2%(労使折半)に引き上げるもの。月収三十万円、ボーナス九十万円(三カ月分)の労働者の場合、年二万九千円の保険料値上げになります。「引き上げを抑制する」どころか、「過去にない大幅な引き上げになる」(村上忠行・連合副事務局長)と強い批判が出ています。

責任放棄の小泉首相

 政府・与党は、十年前に約束した「国庫負担の復元」を真剣に検討することもなく、政管健保の保険料だけで年間五千七百億円も負担を増やそうとしています。

 国庫負担率を引き下げた結果、九二年から十一年間に削減された国庫負担の累計は、日本共産党の小池晃参院議員の調査で約一兆六千億円にのぼることが明らかになりました。それでも小泉純一郎首相は「国庫補助を引き上げることは困難」(六月二十四日、参院本会議)と、責任逃れに終始しています。

 国庫負担を削減し、政管健保財政を破たんさせたうえ、そのつけを保険料と患者負担の引き上げで国民にまわす改悪法案など許されません。政府は国会での約束と法律の規定どおり、まずは国庫負担を元に戻すべきです。(秋野幸子記者)

 


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