2002年7月2日(火)「しんぶん赤旗」
「公明新聞」(六月十二日付、十九日付)が、日本共産党のインターネット・ホームページの特集「奨学金がなくなる?! 小泉内閣が育英会廃止ねらう」をとりあげ、「日本育英会がなくなるという事実だけを取り上げ、後は共産党一流の“デマ”に仕上げる」「奨学金は今後も維持され充実も検討される」などとかみついています。
自民・公明両党の「特殊法人改革」構想のなかで、「日本育英会の廃止」は“目玉”の一つ。「民間にゆだねられるものは民間に」と国の責任をなげすてて、いまでも深刻な教育費の負担に拍車をかけようというのです。日本の奨学金制度を支えてきた日本育英会を廃止すれば、制度の大もとからほりくずされることになります。公明党は、奨学金の「充実」などといっていますが、事実はまったく正反対です。
第一は、無利子の奨学金枠が大幅に減らされることです。行政改革推進事務局がしめした案は、「無利子資金の対象者は、『優れた学生であって経済的理由により修学に困難があるものに対し、学資の貸与等を行う』という法律の主旨に則った絞込みを行う」というものですが、政府与党のなかでこれに異論を唱える人はだれもいません。それどころか政府は、今年度予算で無利子枠を一万六千人分削減してしまいました。
公明党自身かつては、「無利子枠の削減」構想について、「改善というならば、貸与制の一部を改めて、かえって給付制にすべきではなかったのですか。総額を増やして一見改善に見せつつ、一方では有利子制を導入するというのは、失礼ながら羊頭狗肉(くにく)、朝三暮四の策と言われてもやむを得ない」(一九八四年七月六日、参院本会議、高木健太郎・公明党議員=当時)と批判していました。公明党はいったい、この間に無利子枠を減らすどんな条件が生まれたというのでしょうか。
第二は、有利子分の利率が引き上げられることに何の歯止めもないことです。
行革推進事務局は、有利子奨学金について、「『民間にできることは、できるだけ民間に委ねる』という原則の下に、市場のニーズに応じ」ることを文部科学省に強くせまっています。現在、銀行の「教育ローン」の利率は5%程度です。もしすべて「民間に委ねる」ことになれば、現在の0・5%の利率がどうなるのか、何の保障もありません。
「1人の女子生徒は父親が病気で休職中。10月に短大の推薦入学が決まり、育英会の奨学金を期待していたが12月、無利子貸与の不採用通知がきた。有利子の奨学金は受けられるが、母親はちゅうちょしているという。『知り合いに借りられるかどうか聞いて決めたいといわれた。1円でも安い方をと切実なんです』と教師は話す」(「朝日」二〇〇一年十二月二十六日付)――「民間に委ねる」やり方が、こうした悲劇にいっそう拍車をかけることは、火をみるよりあきらかではありませんか。
もともと日本の奨学金制度は、欧米諸国にくらべてきわめて貧弱です。たとえば、アメリカでは大学の学部学生の半分は奨学金をうけているのに、日本は二割を下回ります。そのうえ、欧米諸国では「給付制」が原則なのに、日本はすべて「貸与制」で、しかもその半分には利子がつくというありさまです。奨学金の「充実」というなら、この方向にこそ踏み切るべきです。
国民に痛みをしいる改悪を計画しておきながら、それに反対する声を「デマ」呼ばわりする――政権をになう資格を大もとから問われます。(青年・学生対策委員会事務局斎藤嘉久)