2002年7月1日(月)「しんぶん赤旗」
ブラジル選手たちの個人技の素晴らしさ。心から楽しそうにプレーする選手たち。決勝でのロナウドの二得点、それをもたらした経過には、ブラジル・サッカーの魅力が凝縮されていました。
日本と韓国を舞台に三十二チームが六十四試合をたたかった今大会。なかでも、それは感動的な光景でした。この瞬間に出会いたくて、一次リーグから多くの試合を見てきたんだと改めて思いました。
二十九日の三位決定戦、韓国―トルコの試合でした。激しく点を奪い合った試合もさることながら、そのシーンはタイムアップの笛が吹かれた直後にやってきました。敗れてピッチにうずくまる韓国選手たち。そこへトルコの選手が歩み寄り、手を差しのべる。気を取りなおした韓国選手たちが立ち上がり、握手し、抱き合う――。
やがて両者は肩を組み合い、手を取り合ってサポーターのもとへ歩き出しました。赤い色で埋め尽くされた観客席からは、韓国選手に劣らない拍手がトルコ選手にも送られました。スポーツに勝敗はつきものです。しかし、勝っておごらず、敗者へのいたわりを見せたトルコ選手。敗戦を潔く受け入れ、勝者をたたえた韓国選手。勝敗を超えた両チーム選手の立派な態度に、スタンドも見事に応えました。
「W杯サッカーは国と国の威信をかけた代理戦争」との言葉をよく耳にします。勝つために手段を選ばず、戦争のように相手をせん滅して、なにが残るというのでしょうか。
勝つために全力をあげても、相手選手は打倒すべき「敵」ではなく、ときには自分を高めてくれるかけがえのない「仲間」です。そうした態度を貫き、観客席をも包み込んでいけば、相互理解はもっと進み、スポーツの分野にとどまらない影響が広がっていくのではないでしょうか。
今回のW杯を機にサッカーに“開眼”した人、世界地図を片手にふだん耳にしたこともない国を応援したという話も多く聞きました。「もっと知りたい」と出場国への旅行の申し込みが相次いでいるといいます。欧米だけでない「世界」と初めて接した人たちも多かった一カ月間でした。
サッカーには「試合終了の笛は、次の試合の始まり」という言葉があります。初めて決勝トーナメントに進んだ日本は四年後のドイツ大会を見据えて。同時に、願うのは今大会を機に世界や韓国との新たな関係を築く第一歩となることです。