2002年6月30日(日)「しんぶん赤旗」
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二十九日、韓国と北朝鮮の海軍艦艇間で銃撃戦が行われた延坪島付近は、韓国の国際空港がある仁川市の西方約八十キロに位置しています。この海域では、一九九九年六月にも今回と同様、南北の艦艇が軍事衝突事件を起こしています。双方が自分の「領海」と主張する海域での度重なる軍事衝突は、休戦協定体制の不安定さをあらためて示しました。(前田和則記者)
九九年の事件では、北朝鮮側の警備艇や魚雷艇などが北側の漁船とともに南下し、韓国側が主張する海上境界線である北方限界線(NLL)を越えました。これを韓国の警備艇などが体当たりなどで阻止しようとし、その際、双方が機関砲などで交戦。約十分間にわたって激しい銃砲撃戦が展開され、双方で数十人の死傷者が出ました。
この海域はワタリガニの豊富な漁場です。毎年四月から六月にかけてワタリガニ漁が最盛期を迎え、南下する漁船を警護する形で北側の警備艇が一緒に南下するケースも多いといいます。今月に入って、北朝鮮漁船が南下する様子を韓国マスコミが報じていました。前回の事件当時も、北側の漁船や警備艇などが連日のようにNLLの越境を繰り返しました。
五三年の朝鮮戦争休戦協定では、西側海上の休戦ラインについては合意されていません。休戦協定十三項は、当時、「国連軍」側の支配下にあった当該海域の白〓島、大青島、小島、延坪島、隅島を連合軍司令官が管理すると規定しています。
「国連軍」側は五三年八月に、この規定に基づいて北朝鮮領と島々の間に北方限界線を設定し、実質的な南北境界線としました。
一方、北朝鮮側はこの主張を認めず、陸上の停戦ラインの延長線を基準に海上の軍事境界線を設定し、五つの島は北朝鮮の領海内にあると主張。六八年には領海十二カイリを宣言しました。
九二年に韓国と北朝鮮の間で締結された南北基本合意書では、海上の境界線を当面、「これまで双方が管轄してきた区域とする」としています。韓国側はこれを、北朝鮮側が実質的に北方限界線を認めたものと解釈しています。
これに対し北朝鮮側は前回九九年の事件後に板門店で行われた将官級協議の際、南側が南北基本合意書に基づいて議論しようと主張したことに対して、同合意書には北方限界線を容認するくだりは一切ないと主張。合意書の付属文書では「北と南は南北間の強固な平和状態が成し遂げられるまで現軍事休戦協定を誠実に順守する」と規定していると指摘し、南側の主張に激しく反発していました。北朝鮮側は、韓国側が北方限界線を撤回し、あらためて休戦協定と国際法に基づく海上境界線を確定することを主張していますが、韓国側はこれを拒否しています。