日本共産党

2002年6月29日(土)「しんぶん赤旗」

すすめみらいへレッツゴー

その名も「すみれ会」

全農庄内本部 臨時の女性の労組

何年働いても「臨時」だなんて

雇用継続など求め提訴 嫌がらせに負けない


 十年、二十年、三十年と働き続けても「臨時職員」、賃金は正職員の半分。一年契約で解雇されないかといつも不安…。こんな状態を変え安心して働きたいと、農協の上部団体である全国農業協同組合連合会(全農)庄内本部(山形・酒田市)の「一年契約の臨時職員」の女性たちでつくる労働組合が裁判をしています。労組の名は「すみれ会」。「すすめ、未来へ、レッツゴー」の頭文字からとりました。低賃金・無権利なパート、臨時、派遣などが増えているなか注目されます。


 「何年働いても『臨時職員』としてしか判断されない。労働者としての誇りも奪われ、人間としてまで『臨時』と見られているような気持ちにさえなります」

 こう悔しさを訴えるのは勤続十七年の臨時職員、岡村美保さん(38)=仮名=です。勤務時間は正職員と同じ午前八時四十五分から午後五時まで。異動も残業もしながら働き続けてきました。一緒に働いていた正職員が病気で約二カ月間休んだとき、岡村さんは、その人が担当していた業務をかわりに行うことになり、連日残業をしました。また受け持った業務のなかには正職員から引き継ぎ、次の異動のときは、また別の正職員に引き継いだものもありました。

 「どの職場も、それぞれが受け持った仕事を確実にやって成り立っているのです。私たちも精いっぱい責任を果たしています」と、岡村さんはいいます。

 しかし、臨時職員の賃金は日給制で、正職員の約半分(40〜70%)。長く働けば働くほど同期の正職員とは差が開きます。

産休など実現

 岡村さんが働く庄内経済農業協同組合連合会(二〇〇一年四月に全農と統合、現在は全農庄内本部)は、男女雇用機会均等法が施行(一九八六年)されるまで女性の正職員採用はごくわずかで、一年契約の臨時職員として採用してきました。

 臨時職員の間には不満が渦巻いていました。とくに雇用契約が一年間のため「いつ雇い止め(解雇)になるか不安だった」といいます。結婚したり妊娠したりすると「臨時職員に産休はない」「やめてくれなければ上司としての立場が困る」などと露骨に退職を迫られました。

 八八年には、通勤手当が臨時職員だけ一方的に減額され、正職員と同率支給だったボーナスも年間一カ月分も切り下げられました。

 「ひどい」。これをきっかけに各職場の臨時職員たちが集まって何度も話し合い、労働組合「庄内経済連すみれ会」を結成しました(八九年)。組合員は全員女性です。経営側と交渉し、通勤手当は全額支給に戻りました。さらに七日間の結婚休暇、出産休暇、育児時間、育児休業、年休の一年繰り越しなどを実現してきました。

 ところが二〇〇〇年二月の「すみれ会」との団交の席で、庄内経済連は翌年に予定している全農との統合を機に、臨時職員の雇い止めもありうると通告してきました。

 「働かなければ食べていかれない」「長く働けるように制度を一つずつ実現してきたのに、いつまでも解雇の不安をかかえたまま働くのはいやだ」「働くのは人間として当たり前じゃないの」と女性たちの怒りが沸騰。

 同年三月、「すみれ会」の十二人が原告となって、雇用が継続される地位にあることの確認と、正職員との差別賃金の損害賠償を求めて山形地裁酒田支部に提訴しました。原告は勤続十四年〜三十一年のベテランばかりです。

泣き寝入りいや

 こうした運動で雇用は継続しています。しかし、裁判で女性たちが正職員と同様の仕事をしているという主張をした直後から、経営側は、「臨時職員」の仕事はあくまで「補助的業務」として、それまで臨時職員が長年担当していた経費伝票などの仕事を取り上げたり、新しい経理システムやパソコンの研修会や会議にも参加させないなどの嫌がらせを強めています。

 「すみれ会」書記長の佐々木宏子さん(41)=仮名=はいいます。「何十年働いて経験を積んでも『臨時職員』としてしか扱わないなんて、『臨時職員』という名に隠れた女性差別だと思います。私は十六年前に出産しましたが、当時はまるで犯罪かのように『やめろ』といわれ、出産予定日の一週間前まで働きました。子どもが熱を出しても休ませてとはいえなくて、遠足も同居している母について行ってもらったり…一生懸命働いてきました。みんなが安心して働き続けられるよう、泣き寝入りせず差別をなくしていきたい」

 


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