2002年6月24日(月)「しんぶん赤旗」
仕事の過労やストレスで倒れたり自殺する例が増えています。
過労死などの労災認定件数は昨年度百四十三件と過去最多です。過労自殺、精神障害の認定も七十件で前年度の二倍近くに急増しています。
労災認定の基準が緩和されたことが増加の要因ですが、直視する必要があるのは大企業がリストラで社員を過労に追いやっていることです。
リストラで人が減らされ連日深夜三時ごろまで働き続けた管理職が急死―「過労死・過労自殺一一〇番」にはこんな相談が寄せられました。
過労の犠牲は未来ある若い世代にまで及んでいます。本来もっとも頑健な三十代で倒れた人の相談が例年以上に多いことはその表れです。
日本の労働時間は、サービス残業を含む調査では年間二千二百時間に達します(総務省労働力調査)。
成果で賃金を決めるとして競争をあおる「成果主義」の導入で、労働者は際限のない労働にかりたてられ、精神的な圧迫とストレスを増大させているのです。
過労死は年間一万人以上とみられ一刻も放置できない事態です。
それは労働者の命と健康を奪うとともに、家庭と社会にも重大な悪影響をあたえています。
「今夜は帰れない」とメールで連絡する「メル婚」や週末だけ帰宅する「週末婚」まで生まれている状況は異常です。まともな家庭生活を営めず少子化の一因にもなり、日本社会のゆがみをつくりだしています。
重大なことは、世界でも異常な日本の「カローシ」が社会問題になって十数年たつのに、いっこうに改善されていないことです。
死に至る過労の悲劇が無数の事実によって告発されているのに、企業が利潤一辺倒で労働者の命と健康を顧みないなら、それはもはや企業犯罪ともいうべきです。
実際に過労死の責任を問い遺族が刑事告発するケースも出ています。
過労による犠牲を防ぐ上で何より重要なことは、労働者の健康を守る企業責任を果たさせることです。
電通過労自殺事件の最高裁判決は、使用者が「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」と明確にしました。
厚生労働省も過労死の認定基準の緩和とあわせてことし二月、ようやく過労死防止のための総合対策について通達を出しました。
通達では、残業は月四十五時間以下とするなど時間外労働の削減、年次有給休暇の取得促進、健康診断の実施などの措置を定めています。
労働基準法に違反して過重労働で健康障害を発生させた企業には、再発防止の指導とともに司法処分も含めて厳正に対処するとしています。
二十一世紀を過労死のない社会とするため、過重労働の規制へ政府の本腰を入れた取り組みが重要です。
日本は残業の法的な上限規制がないことが長時間残業を許す根源にあり、残業の法的規制は不可欠です。
違法なサービス残業は過労死の温床ともなっており、その根絶を図ることは当然です。
職場でサービス残業の横行や労働者が休暇も取れないほど働かされることを前提にした、無法なリストラは到底許されません。
過重労働や無法なリストラを規制し、人間らしい労働と生活を実現することは、過労死や過労自殺を防ぐために差し迫った課題です。