2002年6月14日(金)「しんぶん赤旗」
小泉内閣と自民、公明、保守の与党三党が、見苦しい釈明と責任逃れをしています。情報公開請求者の個人情報リスト作成問題で防衛庁が十一日に公表する方針だった約四十ページの「調査報告書」を隠し、わずか四ページの「概要」を「調査報告」と偽り、さらに改ざんまでしていた問題です。言い訳すればするほど、ことの真相がはっきり見えてきます。
問題の発端は、十一日午後五時四十分から開かれた衆院有事法制特別委員会理事会でした。「調査報告」と題する四ページの文書が出席者に配布され、自民党の久間章生筆頭理事が口火を切りました。
「予想に反して薄いが、とにかく調査報告が防衛庁から出たので、十三日に防衛庁リスト問題の集中審議をやってほしい」
実はこの時点で、リスト問題にかかわって同庁がまとめた文書は三種類ありました。(1)約四十ページの「調査報告書」全文(2)有事特別委理事会の約三時間前に、防衛庁が与党側に提示した四ページの「調査報告書の概要」(3)同理事会で配布された同じ四ページの「調査報告」です。(3)は、(2)の「概要」を「調査報告」そのものであるかのようにみせかけ、その内容も「証拠隠しを行ったと言われてもやむを得ない」「厳しい反省が必要」などの記述が削除・改ざんされたものでした。
「本当にこれがリスト問題の調査報告なのか」。理事会で野党側から念を押されても、久間氏は「そうだ」と断言。しかし、野党側は「調査報告書」全文の存在を事前につかんでいました。そこで日本共産党の木島日出夫議員が、与党議員、同席していた防衛庁幹部にきびしく問いただしました。
木島議員「五十ページか百ページか知らないが、調査報告書があるはずだ。ここに提出されているのはその調査報告書の『概要』にすぎないのではないか」
公明党・赤松正雄議員「四ページの文書は『概要』ではなく、調査報告そのものだ」
木島議員「そんなはずはない。私は四ページの『概要』を見ている。『概要』があるなら本体の調査報告書があるのは当然ではないか」
守屋武昌防衛局長「サマリー(概要)が全部で、報告書はない」
与党と防衛庁が一体で、国会の正式の場である理事会で、「調査報告書」全文の存在を完全に否定したのです。
これが大問題になると翌十二日午前の理事会で政府・与党側は一連の文書をやっと提示。久間氏はこう開き直りました。
「昨日(十一日)の時点では、防衛庁としては全文の調査報告書は内部資料扱いだった。だから隠したわけではない」
結局、報告書全文は提出されることになりましたが、防衛庁と与党が国会をあざむいた事実は残ったままです。
これは、政府・与党と国会との信頼関係を根底から破壊する許しがたい暴挙です。放置したままでは、国会審議の土台そのものが崩れてしまいます。
十二日昼、「調査報告書」の隠ぺい、改ざんについて山崎拓・自民党幹事長が、冬柴鉄三・公明党幹事長、二階俊博・保守党幹事長とともに国会内でおこなった“釈明”会見は、見苦しさのきわみでした。
「(概要の内容について)意見を申したことは事実だが、書き直させたことはない」「『誤解を受けないような表現にしたらどうか』と言った」
「(報告書全文は)バックデータ(背景資料)にすべきとは言ったが、公表すべきでないとは言っていない」
つまり、「命令、指示をしたわけではない。意見を申し述べた」だけだというのです。
しかし、政権与党の最高幹部の発言であり、あとになって単なる「意見」だと言い張ってみても、防衛庁側が「指示」と受け取るのは、当然です。
公明党の冬柴幹事長はこの日の会見で、「私どもは(概要の内容に)手を加えていない。意見を言ったら、手を加えて戻ってきた」などと平然と言ってのけましたが、語るに落ちるとはこのことです。
しかも、隠ぺい、改ざんが行われた十一日の会談での与党三幹事長らと防衛庁側とのやりとりは、与党側が単に「意見を申し述べた」などという生易しいものではありませんでした。
「毎日」(十三日付)の報道によると、会談では、防衛庁側からの約四十ページの調査報告書の説明が終わったあと、与党幹部が「この資料は出回っていないのか」と聞き、配っていないとわかると、四ページの「調査報告書の概要」を手に取り、「公表はこの4枚だけでいい」と告げたといいます。そして、「概要」の内容も改ざんされ、「ここでの話はなかったことにしよう」とかん口令を敷き、会談は終了したというのです。
まさに、報告書の全文を意図的に隠ぺいしようとしたのです。
与党三党の幹事長らはなぜ、こうした隠ぺいと改ざんをおこなおうとしたのか。
十二日夜放映のテレビ朝日系番組「ニュースステーション」によると、同日の会談では、与党幹部から「こんなに細かく書く必要があるのか」「すごく正直なものになってるなぁ」「これを公表すれば野党はまた騒ぐに決まっている」などの発言があったといいます。
真相の究明より国会対策を優先したということなのか――。与党は事実関係と責任の所在を明らかにする必要があります。