2002年6月6日(木)「しんぶん赤旗」
トンネル工事従事者のじん肺発生が大きな問題となっていますが、国土交通省のトンネル工事での労働時間の積算基準が、労働基準法の法定労働時間(週四十時間、一日八時間)を超えていることがわかりました。トンネル工事の労働者などでつくる全日本建設交運一般労働組合(建交労)は「ゼネコンの長時間労働を容認する積算基準であり、いまなお続くトンネルじん肺発生の要因になっている」と積算基準の見直しを求めています。
じん肺は長期にわたって粉じんを吸い込むことで肺の機能が破壊される職業病。
工事費を見積もる基準となる国土交通省の土木工事積算基準(ことし四月一日現在)は、トンネル工事の掘削(二交替制)について「拘束時間十一時間、労働時間十時間(賃金対象時間)、実作業時間九時間を基準とする」としています。労働基準法は週の労働時間は四十時間、一日の労働時間は八時間を超えてはならないと定めています。
同省技術調査課は、積算基準が法定労働時間を超えていることについて「トンネル工事の実態調査の結果を示したものであり、あくまでも目安だ。施工業者にこの通りやれというものではない」と説明します。
しかし、実際には大手ゼネコンが請け負ったトンネル工事で働く労働者の多くが、二交替制(たとえば午前七時〜午後六時と午後七時〜翌日午前六時)で十一時間以上の長時間労働が常態化しています。全国労災職業病部会の成沢方記事務局長は「拘束十一時間などの基準は、多くのじん肺被害を出す要因となってきた長時間労働を容認するものだ。労働基準法を厳守する方向で積算基準を見なおすべきだ」と話します。国土交通省技術調査課は「実態調査をしてその結果によって見直しを含めて検討したい」といいます。
トンネルじん肺損害賠償請求訴訟は企業の責任を認める判決・和解が相次いでいます。これを背景に、じん肺防止対策として電動防じんマスクの着用などはすすみましたが、労働時間については国土交通省の積算基準は以前のまま。いまなお毎年約千二百人の重症のじん肺患者が出ています。