日本共産党

2002年6月4日(火)「しんぶん赤旗」

アフガン経由パイプライン建設合意

テロ報復にかこつけて

資源戦略を進める米国


 アフガニスタン、パキスタン、トルクメニスタンの三カ国首脳は五月三十日、三カ国を通過する天然ガスの大規模なパイプライン建設計画に合意し、パキスタンの首都イスラマバードで調印しました。関係三カ国に多大な利益をもたらすガスパイプライン建設計画です。この計画はもともと米国がその資源戦略に沿って一九九〇年代半ばから進めてきたものです。合意の背後には、テロへの軍事報復攻撃を強行し、中央アジア地域に新たに軍事拠点を作った米国の資源国家戦略があります。(西尾正哉記者)

軍事作戦で他国の影響排除

長期駐留で介入態勢を維持

 今回合意されたのは、トルクメニスタン南部のダウラタバードからアフガンを通り、パキスタン南部グワダル港に至る全長千四百六十キロのパイプライン。建設費は二十五億ドル(約三千七十五億円)ともいわれ、トルクメニスタンのニヤゾフ大統領は“アフガンはパイプライン建設で三億ドル(約三百七十億円)の利益を得る”と指摘します。

石油の6%と天然ガスの40%

 パキスタン政府高官は、天然ガスの次はすぐに石油のパイプラインが建設されるといいます。

 「世界に埋蔵される石油の6%と天然ガス40%」とされる中央アジアのエネルギー資源。米国は、ロシアと主導権を争いながら資源国家戦略を立ててきました。中でもロシア、イランを通過しないパイプラインの建設は米国の戦略のかなめでした。

 米国とともに、アフガンのタリバン政権とも太い関係のあったパキスタン軍情報機関(ISI)のハミド・グル元長官は建設合意について、「中央アジアには膨大な資源が存在する。最初に手を着ける者が利益を得ることは明らかだ。これは中央アジアのエネルギー資源の主導権を握るゲームだ。米国は他の大国に邪魔されたくないと考えている」と外国通信社に語っています。

 米国の石油会社ユノカルは九〇年代後半、当時のタリバン政権との関係を深めつつ、アフガンを経由するパイプライン建設計画を熱心に推進しました。しかし九八年の米大使館爆破事件で米国がアフガンにミサイル攻撃を行ったことから、計画はとん挫します。

 しかし、米国は同時多発テロ後の軍事報復作戦で、アフガン「再建」の事実上の主導権を握りました。ブッシュ政権は早速昨年末、かつてユノカル社の相談役だったハリルザド氏をアフガン特使に任命しました。

 一方、米国の強い後押しで選ばれたアフガン暫定政権のカルザイ議長も「アフガンでパイプライン建設中のユノカルのコンサルタントを務めた」人物です(仏紙ルモンド)。

“新たな政権が発足する前に”

 パイプライン建設計画は急速に復活、動きだしました。カルザイ議長は二月、初めて公式訪問したパキスタンでパイプライン計画復活の合意をとりつけました。暫定政権発足から五十日足らずの出来事でした。

 これほどまでに急いだ理由として「新たな政権が発足する前に建設の合意がしたかったのだ」(前出のグル氏)との指摘もあります。

 ユノカル社は、今回調印された計画については「関心がない」としていると報じられています。

 しかし、アフガンの鉱山産業省モハマド・アデル副大臣は「当然、ユノカル社が経済的にも技術的にも強い。ユノカル社が(建設の契約を)獲得するだろう」(米紙ロサンゼルス・タイムズ)とのべています。

 米国は、今回のアフガンへの軍事作戦で、長年追求してきたアフガン・中央アジア周辺での米軍の拠点づくりに「成功」しました。資源戦略を進める上で軍事力は不可欠な要素です。

 パイプライン建設でアフガンの治安が問題となってきましたが、米国は軍事行動後もアフガンに軍隊を駐留させ、直接介入するようになりました。ハゲンベック米軍少将は「われわれは、さまざまな作戦ができるように軍隊を維持しなければならない」(英紙フィナンシャル・タイムズ五月十一、十二日付)とのべ、アルカイダ残党の掃討を口実に長期駐留させる構えです。

 米紙ニューヨーク・タイムズ一月八日付は、米軍は「より恒常的な基地を建設し、より広範な補給体制を築き上げる」陸軍部隊をアフガン南部のカンダハルやカブール北方のバグラム、ウズベキスタンのカナバードに派遣していることを指摘しています。

 また、同記事は、米軍が空輸のセンターの役割を持つ、三千人の部隊を収容できる空軍基地をキルギスタンに建設したと指摘。さらに、ウズベキスタンやパキスタンでの基地改良を指摘し、その意味は「軍事的というよりもっと政治的なものかもしれない」とのウルフォウィッツ米国防副長官の発言を紹介しました。

 


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