2002年5月29日(水)「しんぶん赤旗」
防衛庁が、情報公開法に基づき資料請求してきた人物について、身元を独自に調べ、所属団体や思想信条に関する記載もふくむリストを内部で作成していたことが二十八日、明らかになりました。情報公開法で請求者は氏名・住所・連絡先を求められるだけなのに、防衛庁側は、追跡調査で思想まで調べていたわけで、国民の基本的人権を侵す有事立法や個人情報保護法案との関係でも新たな問題になってきました。
これは一部新聞報道で判明したもので、防衛庁の柳沢協二官房長は同日、三等海佐(48)=現海自岩国調査分遣隊長=が問題のリストを作成し、上司ら七人に配布したことを認めました。
官房長によると、三佐は一昨年八月から今年三月中旬までの間、海幕情報公開(準備)室に勤務中、情報公開を申請に来た百四十二人分全員のリストを作成。職業や所属団体名、生年月日などの個人情報を付け加えました。追加された個人データは三佐が、担当の部課などに照会していました。現職の自衛官なら「現自」、市民グループなら「市民G」などと職業や所属団体を記載。「反戦自衛官」「受験者(アトピーで失格)の母」などと書き加えられたケースも。
三佐は内部部局と陸海空三幕の情報公開室、海幕の調査課保全室、海自中央調査隊資料課などに、フロッピーディスクなどの形でリストを配布していました。官房長は「(三佐は)上司から請求者がどんな人物か聞かれたときに使ったと推測する」と説明。「あってはならないこと」とのべ、関係者を処分することを明らかにしました。官房長は上司の直接の指示など組織的な関与は否定しました。行政機関個人情報保護法の目的外利用などの条項に違反する疑いが濃く、解明が求められます。
軍事リポーターの石川巌さん 情報公開法に従って、調べにきた人の思想や身分を調べるというのはまったくおかしい。中谷防衛庁長官でさえ、法の趣旨に反するといわざるを得ないことです。とても個人的にやったとは考えられない。防衛庁には警務隊や調査隊といった、他の役所にない調査機関もあります。
知人の研究者によると、防衛庁に情報公開の手続きにいったら、自衛隊関係者の友人から連絡があり、“あんた資料を請求しただろう。おれのところに、あんたがどういう人か聞いてきた”と伝えてくれたといいます。おまけに防衛庁の担当者は、いつの間にか知人の著書や論文まで詳しく調べ上げていたそうで、本当にとんでもない話です。