2002年5月22日(水)「しんぶん赤旗」
海外での武力行使という一線を踏み越え、戦争がいちばん大事な国づくりに突き進む――有事法制三法案は、戦後日本の国のあり方を根本から変える重大法案です。それをたった六日間の審議で、強行の道に踏み出す政府・自公保のやり方は、数の力で国を私物化する暴挙というほかはありません。
有事法案は、第二次世界大戦の痛苦の教訓にたって、憲法が永久に放棄すると宣言した戦争をなによりも優先する国に、日本をひっくり返そうというものです。
一九九九年成立の「周辺事態法」は、米国がアジア太平洋地域で介入戦争に乗り出せば、自衛隊ばかりでなく日本が国をあげて協力することを定めました。日本を「戦争をする国」へと転換させる、文字通りの「戦争法」でした。
しかし、同法案にはまがりなりにも、(1)海外での自衛隊の武力行使はできない、(2)国民の強制動員はできない――という二つの“制約”がありました。有事法案は、この“制約”を一気に突破し、「戦争法」をいっそう拡大、強化する狙いを持っています。
海外での自衛隊の先制的な武力行使にいっさい歯止めがなく、憲法が「永久不可侵」と宣言した国民の自由と権利を制限して、労働者や自治体を強制動員し、国民生活や経済を国家統制の下に置く――。わずかな国会審議からも、見えてきたのは、こうした法案のきわめて危険な内容です。
「法案を五月中に衆院で通すには、今日中に決めなければならなかった」。公聴会日程の採決直後、自民党の久間章生・有事法制特別委理事(元防衛庁長官)が語った言葉です。国会審議や国民の声などおかまいなし、とにかく“成立初めにありき”の態度です。
特別委で法案の審議が始まった七日から二十一日までの審議時間は、わずか三十四時間にすぎません。野党が本格的な質疑をしたのは、七、九両日の総括質疑を除けば、二十日の審議が初めてでした。「法案の論点は出尽くした」(自民党)どころか、法案の審議は始まったばかりなのです。
わずかな審議のなかでも、法案の危険な内容が明らかになるなかで、賛否を超え、慎重審議を求める世論が大きくなり、反対の運動も日増しに高まっています。「朝日」(二十一日付)によると、小泉内閣が法案の説明を果たしていないとする人は七割にのぼっています。連合は今国会の法案成立に反対しており、与党内からも「なぜいま急ぐのか」との声も出ています。
この法案は何をするものか、なぜ必要なのか。国民が考えだそうとしているなかで、強行成立にむけた出口をさっさと決めることは、こうした国民の間での議論を断ち切るものです。こうした反民主主義的やり方は、有事法制の本質にも通じるものです。(高柳幸雄記者)