日本共産党

2002年5月19日(日)「しんぶん赤旗」

ドイツ

各党が総選挙へ政策

失業、治安で保守野党攻勢


 四カ月後に総選挙を迎えるドイツでは、各党が選挙政策を発表し、論戦を活発化させています。シュレーダー連立政権側は最近の世論調査で支持が低迷、保守野党側に大幅なリードを許しています。

連立維持困難な情勢

 十五日公表されたインフラテスト・ディマップ社の世論調査でも、保守野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)の支持率はそれぞれ40%、12%で過半数を維持。これに対し与党側は社会民主党(SPD)が32%、緑の党7%。左翼野党・民主的社会主義党(PDS)の6%を加えても、連立政権維持は困難な情勢となっています。

 連立与党の支持率低迷の主因は、ふたたび四百万人台を突破した高失業率。政権発足時に当時四百四十万人だった失業者数を「向こう四年間で着実に減らしていく」(連立協定)とうたった最大の公約が実現していません。経済も二〇〇一年後半の落ち込みからの回復が遅れ、今年度も国内総生産(GDP)の成長率は1%余と予想されています。

 SPDは選挙公約で、青年雇用増大をはかる「ジャンプ計画」など従来の政策の推進とともに、低賃金分野の労働に賃金補助を行い失業者の就業を促進する「マインツ方式」の導入などをうたっています。

 企業倒産の増大も政権側の支持率低下の要因です。二〇〇一年の倒産件数は三万二千件、今年度は四万件と予想されています。倒産企業のほとんどは中小企業。『シュピーゲル』誌(六日号)は、SPDを支援した業者が現政権の下で「系統的に命を切り縮められてきた」と批判している例を紹介しています。

 SPDが、企業献金を受け取る態度を変えず、ケルン市などで保守同様の政治資金事件を起こしていることも、有権者の不信を強めています。

 平和問題や環境保護を旗印にしてきた緑の党は、政権内でSPDと妥協、コソボ空爆参加をはじめ、中東・アフガニスタンへのドイツ軍派兵に手を貸してきたことで失望を買い、次第に支持を減らしています。

 保守野党CDU・CSUは経済の回復・発展の政策として打ち出しているのは「三つの40%」。(1)郵便、交通などの民営化で国の財政負担を40%にする(2)社会保障の国庫負担を40%へ軽減(3)所得税最高税率を40%に引き下げる、ことがその内容です。苦境にある中小企業主の要求を反映してもいますが、基本的には大企業・財界の意向を反映したものです。

銃乱射、テロも関心

 同党はまた「労働市場の柔軟化」を主張しています。その内容は、臨時雇用、解雇の容易化、従業員の共同決定権の制限など。FDPも解雇規制を緩和せよと要求しています。

 全国に衝撃を与えた四月末のエアフルトの銃乱射事件や米国の同時テロ事件容疑者がドイツに潜伏していたことなどで、治安問題も有権者の関心を高めています。犯罪発生率全国一のハンブルクで昨年九月、治安強化を主張した右翼政党シル党が躍進、CDUとの連立州政府が誕生しました。

 SPDは治安対策の不十分さを認め、米同時テロ事件以後、警戒態勢を強化、今年度の予算も増やしています。CDU・CSUは、現政権が必要な措置を怠ってきたと批判、青少年の刑罰加重、武器所持の年齢制限、過激派組織の監視や禁止、犯罪テロ組織の摘発を公約、「移民受け入れ推進は治安を危険にし、過激な勢力を助長させる」と主張しています。

 こうしたなかで左翼野党のPDSは、「将来性ある公共投資と公正な税政策で国民の懐をあたため需要を増やす」「ゼネコンへの発注に代え、地場産業、中小企業への公募をおこなう」「残業を減らして失業をなくす」など、国民の生活擁護と政治の民主的な転換を主張しています。(ベルリンで坂本秀典)

 


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