日本共産党

2002年5月18日(土)「しんぶん赤旗」

ここを語りたい

「しんぶん赤旗」の真価〈中〉

編集局長 関口孝夫

「ストップ・海外武力行使法案」

共同の機関紙


 有事法制にたいする読者のみなさんの反応、関心の高さには大いに励まされています。

 三月十七日付から本紙三面で「有事立法ってなに?」という連載(十六回)をやりました。日刊紙として初めてのカラーマンガ連載でした。

 二度と戦争には参加しないと憲法で固く誓った日本が、アメリカが引き起こす介入戦争に武力をもって参戦する、国民をこの戦争に強制的に動員する仕掛け――この法律の危険な本質をできるだけ広く知ってもらいたい、しかも一刻も早く! そんな思いでとりくんだ企画でした。

 政治部のスタッフがシナリオを書き、漫画家の白六郎さんと何度も打ち合わせを重ねてはじめたこの連載は大好評で、連載中から「早くパンフレットにして」の強い要望が寄せられました。

 パンフになると初刷りを大きく上回る予約が殺到し、現在注文数は三十万部を超えるベストセラーになっています。

 国会論戦を踏まえ、いまマンガ連載の続編を計画しています。日曜版編集部もわかりやすい有事法制のマンガ特集を準備しています。

 日本新聞協会が有事三法案の国会審議が始まった段階でこの問題をとりあげた全国四十九本の社・論説をまとめています。それによると「読売」「産経」が推進・賛成の基調を明確にし、「毎日」「東京」は「慎重審議で」、「朝日」「西日本」は「急がずとも」と、ともに慎重派。憲法の理念から「賛成できぬ」と反対するのは「北海道」「琉球」となっています。(「紙面展望」四月三十日)

商業メディアと際立ったちがい

 作家の斎藤貴男さんは、情報誌『ダカーポ』五月十五日号の「メディア時評」のページで各紙の有事報道の特徴を分析、「新聞というより防衛庁パンフのQ&A」、「政府への貴重なアドバイス」、「ややこしく小難しい」と批判を加え、「こんな法案を仕掛けられるメディアや私たちの状況こそ、『有事』だ」と痛烈です。

 斎藤さんはそのなかで、「今回、有事法制絡みで比較的まともな報道をした全国紙(?)は『赤旗』だけである」として、「(四月)十四日付が、読者に噛(か)み砕いて事の深刻さをよく伝えていた」とほめ、そのポイントを詳しく紹介しています。

 「赤旗」の毎日の紙面をひろげると、全国各地で起きている有事法制に反対するさまざまな形態、規模の集会、デモ、宣伝、行動の報道が載っています。商業メディアが草の根で起きているこの動きをほとんど無視、黙殺しているので、「赤旗」の紙面との際立ったちがいとなっています。

「赤旗」の報道の使命の重さ痛感

 この法案では、NHKなど言論機関も戦争協力が義務づけられています。言論、集会の自由を抑圧し、国民の思想、良心にまで土足で踏み込んでくる危険な特質を内蔵する有事法制だけに、メディアは他人事ではすまされないはずです。

 各メディアの歯がゆいばかりの報道姿勢を見るにつけ、「赤旗」の報道の使命の重さを痛感します。

 「赤旗」は有事法制に反対するすべての人たちの運動の輪をひろげる絆(きずな)の役割をはたしています。アジアでの米日共同武力行使法案を許していいのか、戦争を禁止した世界に誇る憲法第九条下で「戦死」(「墓地、埋葬等に関する法律の適用除外」)や「捕虜の取扱いに関する措置」をおおっぴらにするこんな法案を黙って見過ごすのか――。

 六〇年安保反対闘争がそうであったように、この法案の危険な本質が広く知られれば知られるほど反対の世論の輪は巨大になります。マスコミの姿勢にも大きな影響を与えることができます。「赤旗」は、戦争への道を拒否し平和な国のあり方をもとめる圧倒的多数の人たちの共同の機関紙です。

小泉首相論と「赤旗」

 中曽根康弘元首相は、小泉政権発足直後、「首相は私が主張していることとまったく同じことを言っている」として四つの共通点をあげました。(1)憲法改正(2)首相公選(3)集団的自衛権の行使容認(4)靖国神社参拝です。日本をアメリカの不沈空母にするといったこの超タカ派元首相は、「(小泉首相には)二十一世紀の日本の国家の基軸、骨格、基本をつくっていこうという意欲がうかがえる。だから応援している」というのです。

 こんな小泉氏を「自民党をぶち壊す改革首相」として天まで持ち上げたのは日本のマスコミでした。

 この一年間、紙面に躍った小泉賛美の記事を並べただけでも、「小泉首相を励ます」(「朝日」)、「小泉さんをほめ生かそう」(「毎日」)、「『涙は女性の最大の武器』などと答えてけろっとしている。当意即妙は指導者に必要な才である」(「日経」)などなど。「改革首相」幻想をあおりました。

 「赤旗」が当初から小泉流改革がいかに国民に害をなす痛みの政治であるかを医療改悪、中小企業倒産の続発と大企業のリストラ、失業、不良債権の拡大再生産などの例を示し、繰り返し警告してきた紙面と対照的でした。

 今年一月九日付の「赤旗」と「朝日」が、正反対の小泉論を紙面にしたことは記憶にとどめておいていいと思います。

 「赤旗」は、小泉首相を「自民党政治の根本のゆがみについては、まったく『改革』の意思も意欲ももたない政治家」「むしろ、この根本を変える改革にはもっとも強烈な反対論者」(「不破議長インタビュー」)と報じました。

 これにたいしてこの日の「朝日」の社説は、小泉首相を「あたかも野党に接するように自民党に向き合っている」「自公保が最大勢力の小泉党と連立を組んだ格好」と書きました。

 「本質的な自民党政治の守護者」と「自民党と向き合っている小泉党」――百八十度のちがいがあります。

 どちらが「確かな指針」をしめしたか、結論はもうでています。

 憲法に真っ向から挑戦するこんどの有事法制のゴリ押し政治、大企業・大銀行中心主義政策、金権腐敗容認姿勢と、自民党政治のあり方が根本から問われた問題で小泉首相は、ことごとく自民党政治の本質的守護者であることを国民の前にさらしました。世論調査の支持率急落でそのことがはっきりと裏付けられた形です。(つづく)

 


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