日本共産党

2002年5月17日(金)「しんぶん赤旗」

主張

就職率最悪

若者と日本の未来が危うい


 高校卒業生の就職率が過去最悪を記録しました。文部科学省の調査によると、三月末の就職率は86・3%で、未就職の卒業生は約三万五千人で昨年より六千人近く増えています。若者の就職難と失業増大は日本社会の未来にかかわる大問題です。

 大学などの就職率も92・0%と依然厳しく、高校、大学の新卒未就職者は二十万人以上とみられます。

 希望をもって学んできた若者が、社会人としての第一歩から就職できないで、失業者や半失業者となることほどつらい門出はありません。

身勝手な企業戦略

 就職率悪化の直接の原因は、極端な求人の減少です。バブル崩壊後、高校生の求人はピーク時に比べて六分の一にも激減しているのです。

 この背景には、深刻な不況とともに、目先の利益のために徹底したリストラに走る大企業の身勝手な戦略があります。工場閉鎖と下請けいじめは、地域経済を破壊し、地方での採用も極端に冷え込ませています。

 深刻なのは、大企業が低コストを求めて海外への生産移転や正社員を不安定雇用に置き換える戦略をとっていることです。景気が回復しても雇用が増えない、増えても不安定雇用ばかりとなりかねません。

 深刻な就職難と青年失業者が百二十五万人もいる現状は、日本社会のあり方にもさまざまなゆがみをもたらす重大な事態です。

 若い世代の夢や希望を奪い、学ぶ意欲も減退させます。「自分は社会で認められていない」という不満やいらだちをあおり、社会不安の増大さえ招きかねません。

 社会にとっても、さまざまな分野で若い世代の断絶は仕事や技術が受け継がれない状態を招き、産業や企業の存立基盤も揺るがす問題です。

 教育現場から「いまのリストラは中長期的に見れば日本も企業もだめにしてしまう」「若者たちの成長する場が保障されない国はどうなるのか」「国家的な危機状況だ」という声が上がっており、政府や経済界も真剣に受け止めるべきです。

 自治体が新卒未就職者を臨時雇用するなどの努力もはじまっていますが、政府の本腰を入れた対策なしには深刻な現状を打開できません。

 欧州諸国は、青年の雇用について特別の対策をとっています。

 フランスは公共部門などで三十五万人の若者の雇用創出をめざす法を制定し取り組み、ドイツも青年雇用促進の「ジャンプ計画」で二年間に二十七万人雇用を増やしています。

 オーストリアは青年職業訓練保障法を定めて、職業訓練支援など進め、青年の失業率を低く抑えています。イギリスは政府が青年の就職活動を支援し、見つからない人は助成金付きの就職や手当を受けてボランティアや環境保全事業に就労するなどの雇用対策で成果を上げています。

生きがいある仕事を

 最悪の雇用情勢の日本に必要なのは、大企業の競争力強化と利益最優先のリストラを応援する政治ではなく、就職難の打開と青年の雇用拡大に特別の力を入れることです。

 長期にわたる新規採用の抑制をやめ、青年を含めて雇用を確保することは大企業の社会的責任です。

 違法なサービス残業の解消、長時間残業の削減、有給休暇取得による雇用の拡大と国民生活に必要な公的分野の人手不足の解消によって数百万人の新たな雇用が生まれます。

 日本社会は人が余っているのではなく本当は働く若い力が必要です。未来を担う青年に生きがいある仕事を保障するのは政治の責任です。

 


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