2002年5月15日(水)「しんぶん赤旗」
【北京１４日小寺松雄】中国・瀋陽の日本総領事館事件で、瀋陽での調査を終えた外務省の小野領事移住部長は十四日午前、中国外務省を訪れて羅田広領事局長と会談しましたが、事実関係の突き合わせは平行線に終わりました。
日本側説明によると、小野部長は十三日発表の日本側調査結果に基づき、中国側が十三日夜に発表した「再反論」にも応える内容で発言、中国側の謝罪と五人の日本への引き渡しを求めました。
この中で小野部長は、中国側がいう「日本側が手招き」「中国側の“入っていいか”の問いにうなずいた」などの指摘に「そうした事実はない」と反論。日本の副領事が「通訳を通じて、（館内に）入って連れていってくださいといった」という部分についても小野部長は「そもそもその副領事は中国語ができる」と反論しました。
一方、小野部長が「阿南大使が九日に劉外務次官補に抗議したさい、中国側は“日本側が同意した”などとは一言もいわなかったではないか」と語ったのに対し、羅局長は「いや一貫している。新しい事実が出てきただけだ」と主張、日本側が求める謝罪や五人の引き渡しを拒否しました。
やりとりの中では、小野部長が「たとえ中国側が“日本側はうなずき、手招きした”ととったとしても、それは同意ではない」、羅局長が「突発性事件なのであって、どれが同意かどうかはあまり意味がない」と発言する場面もあったといいます。
中国外務省の孔泉報道官は十四日午後に定例会見し、午前の会談での羅局長の「日本側の同意に基づいて連行した」という主張を改めて紹介。「一連の重要部分で日本側の説明は事実に合致せず、受け入れられない」と強調。「事件の真相がはっきりしているのに、日本側はつじつま合わせにこだわっている」とし、「日本は客観的事実を確かめてほしい」と語りました。
さらに、警備担当副領事が正門横の警官詰め所に入れられた五人と接触した際、手紙を渡されたと述べました。
また、連行された五人については「北朝鮮の人間だと自称しているが、なお調査中」としつつ「人道主義で対処する」と表明しました。先に中国内のアメリカ総領事館とカナダ大使館に逃げ込んだ北朝鮮の住人計五人は「人道主義的精神で妥当な処理をして解決済み」とのべ、第三国に出国したことを事実上認めました。
