2002年5月12日(日)「しんぶん赤旗」
みずほ銀行の大規模システム障害が発生してから一カ月余。経営陣は四月三十日の九百万件の口座振替も、「順調に処理が終了した」と正常化をアピールしました。しかし、口座振替の現場はどうか。関係者に取材してみると休日返上、必死の人海戦術による、つじつま合わせが行われていました。
どんなにすさまじい事態になっているか。四月十五日に出された「連絡文書」が物語っています。一日の残業時間が、通常では最高四時間のところ、十一時間まで「特別延長」されています。午後五時から残業すると、午前四時までになります。
この措置に対する職場の声は――。「サービス残業にならなくて手当が払われるのだからまだいい。この『特別延長』は、三カ月なので、それ以後はまたサービス残業にされるのでは…」
「お客さんの磁気テープを、やっと支店に返却するめどがたった」。口座振替の担当者がほっと胸をなで下ろしたのはゴールデンウイーク明け。本来、口座振替データの入った磁気テープは、振替実施後すぐに返却されるもの。
ところが、コンピューターが読み込めないエラーが多発。口座振替処理ができなくなり、エラーを人間がチェックする必要に迫られました。
トラブル直後、処理の遅れから、返却できない磁気テープが部屋の中に散乱、足の踏み場もないほどだったといいます。
口座振替を実施する旧第一勧業銀行の事務センター(東京・渋谷区)では、男性行員が統合前の三月最後の週から、泊まり込みました。「口座振替が間に合わない深刻な事態に備えていた」といいます。システム障害が発生し、四月の第一週まで泊まり込みが延長されると、「これじゃ体が持たない」と不満が噴出。二週目から男性行員は、二交代の二十四時間体制に切り替えられました。
女性行員も、トラブル発生直後に泊まり込みを強いられました。
各支店では、百件以下の小口の口座振替を手作業で引き落としていました。口座番号、顧客名、金額等を連記式伝票におこし、一件一件端末機で処理しています。開店前の早朝出勤と残業で対応。支店での作業は七日までの予定でしたが、現在も解除されていません。
みずほ銀行のシステム障害は、お客はもとより多くの行員に犠牲を転嫁しています。統合へ見切り発車した経営陣の責任こそ問われなければなりません。
旧富士銀行の事務センター(東京・多摩市)に働く労働者の声
○「答えがない作業だから本当に疲れる」…口座振替の障害で、おかしくなったデータを直す作業で。
○「あいつ今日きていないな」「いいよ、疲れているんだろう、寝かしておいてやれよ」…若い人の会話。土日の出勤が2週間続き、連日夜の10時か11時まで残業。
○「今日もランド行きか」…自宅に帰れず多摩センターの次の駅にある「永山健康ランド」のサウナに通う人。
○「労基署にでもどこにでも訴えたいよ」と若い人たち。