2002年5月12日(日)「しんぶん赤旗」
【北京11日小寺松雄】中国・瀋陽の日本総領事館事件について中国外務省の孔泉報道官は十一日未明、中国の警官は日本総領事館側の同意を得て館内に入り、二人を連行したとする談話を発表しました。
談話は、「五人の身元不明者が正門から総領事館に突入をはかったので、中国の警察官が阻止したが、うち二人が館内に入ったので、中国の警官は日本の副領事の同意を得てから館内に入り、二人を連れ出した。その後、一人の領事が中国側に状況を聞き、中国の公安職員が五人を連れていくことに同意し、あわせて警官に感謝を表明した」という内容です。
これに対して日本の外務省は同日未明、「連行に同意を与えた事実はない」とのべ、総領事館側も同日、「まったく承知していないことだ」と反論。これまでの日本側の認識としては(1)中国警官が二人を連行しようとした際、領事館員が「日本側で事情を聞きたい」といった(2)五人が公安の車で連行される際、「移動しないよう」求めた―と指摘しています。
十一日に瀋陽入りした外務省の小野領事移住部長らは、午前から総領事館で聞き取り調査を開始しました。小野部長は「中国側の談話は承知している。日本政府はすでに反論を発表しており、それをも踏まえて調査したい」と語りました。
調査は十三人の領事館日本人スタッフの聞き取りを中心に進められていますが、内容は発表されていません。総領事館側は「中国側の無断侵入、ウィーン条約違反。日本側は連行に同意していない」との大枠をくずしていません。
なお孔報道官談話は最後に「中国は中日関係を一貫して重視しており、両国間の偶発事件については、冷静沈着に処理してきた」とのべ、中国側としても事態収拾を模索しているとも取れる表現になっています。