日本共産党

2002年5月11日(土)「しんぶん赤旗」

審議でわかった有事3法案の大問題

まさに「戦争国家」


 浮かび上がったのは戦前の亡霊のような戦時体制づくり―衆院有事法制特別委員会での審議を通じて、アメリカの戦争に国民を強制動員する戦争国家法案(武力攻撃事態法案など有事法制三法案)の危険性が明らかになりました。


介入戦争

米軍支援に国民を動員

 戦争国家法案は、日本への「武力攻撃事態」で発動する仕組みです。ところが、小泉首相は「いついかなるときに緊急事態が発生するかわからない」などというだけ。日本が侵略される現実性に触れることはできません。

 逆に、ブッシュ米政権が「時には先制攻撃も必要」(ラムズフェルド国防長官)などとしていることには「あらゆる選択肢を残したものと理解している」という態度です。現にアフガン戦争をたたかう米軍支援のための自衛隊派遣を半年間延長する方針です。

 ここからみえてくる現実の危険は、アメリカの戦争に日本が参加する場合。政府も、アメリカがアジア太平洋地域で介入戦争を起こした場合におこりうる「周辺事態」と「武力攻撃事態」が重なることは認めています。

 同じ一つの事態なのですから、「周辺事態」を「武力攻撃事態」と読み替えて戦争国家法案を発動することが可能です。

 一九九九年に成立した周辺事態法では自治体管理の空港・港湾の米軍の軍事利用も強制はできませんでした。自治体には「協力の求め」ができるだけだったからです。医療・輸送などの民間業者へも「協力の依頼」だけでした。

 それが、今度の戦争国家法案では可能となり、米軍支援が国民に強制されることになるのです。川口順子外相は「米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるよう支援を検討する」と答弁しています。

強制動員

平時から訓練にかりだす

 今度の武力攻撃事態法案では、政府が決める戦争方針に対して「国民は協力するよう努める」としています。

 具体的にどういう「協力」か。政府は、“今後二年以内に整備する個別法制で検討する”というだけで、強制動員の具体的内容は明らかにしていません。

 一方で、平時から「戦時」に備えた機関となる「民間防衛組織」や「訓練」に国民をかりだす意向を示しています。福田康夫官房長官は「必要な組織や訓練などのあり方について、仕組みを考えたい」とのべました。

 政府は戦前の“隣組”のような組織を否定しますが、地域や学校で国民生活を統制する組織をつくり、日常的に「戦時」訓練が強制されるという事態が起こり得るのです。

首相が直接

 自衛隊法一〇三条では「戦時」の際、自衛隊が必要とする土地や物資をとりあげ、医療、土木建築、輸送関係者に業務従事命令を出せる仕組みになっています。防衛庁長官などの要請に基づき、都道府県知事が執行します。

 知事が「戦争に協力しない」として国の要請を拒否したらどうなるか。中谷防衛庁長官は「内閣総理大臣が是正の指示、代執行の措置をとる」と答弁しました。

 これは、地方自治法を悪用し、知事が協力しなければ自治体を飛び越えて首相が直接、国民を動員するというものです。

民間機関も

 武力攻撃事態法案では、NHK、NTTなど公共機関や公益的事業者を「指定公共機関」にして戦争協力を義務づけ、首相の統制下におくとしています。

 どの企業を指定するかは政府任せ。福田官房長官は「民間放送事業者は警報などの緊急情報の伝達のために指定される可能性はある」とのべ、新聞社や通信社についても「インターネットのような伝達手段を使ってその任にあたっていただくことは当然考えられる」と対象にあげています。

図
人権制限

集会や報道の自由奪う

歯止めなし

 戦争国家法案が発動されれば、国民の自由と権利がなんの歯止めもなく制限されることも、浮かび上がってきました。

 武力攻撃事態法案は、第三条で「国民の自由と権利」について、種類、範囲の指定なく「制限が加えられる場合は…」と、すべてに「制限」がありうるとしています。

 このことを追及された福田官房長官は何を制限するか、「今後個別具体的に規定する」とのべるばかり。結局、政府が整備する今後の法制に白紙委任する形です。

 そのなかでも、政府が明らかにしたのは、戦争反対の集会や報道の自由の制限も可能とすることです。

 福田長官は、「集会や報道の自由は確保されているが、あくまでも公共の福祉に反しない限りだ」とのべました。

 これは、「公共の福祉」を持ち出しさえすれば、集会・報道の自由までなんでも制限できるというもの。基本的人権は「最大の尊重」をうたった憲法一三条とは正反対の考え方です。

「罰則科す」

 侵害を許されない絶対的権利である「内心の自由」まで侵される危険も明確になりました。

 自衛隊法改悪案は、自衛隊が必要な物資をとりあげるため、取扱業者に出す保管命令違反の者に、六カ月以下の懲役、三十万円以下の罰金を科すとしています。中谷防衛庁長官は「本人の内心には関係ない。行為にもとづき罰則を科す」とのべました。

 戦争反対の信条にもとづいた行為でも、自衛隊の行動を妨げるとみなされれば、犯罪として処罰されるのです。その信条を「沈黙する自由」も奪われます。さらに政府は、国家機密法(スパイ防止法)といった国民の知る権利まで奪う立法措置まで、公言しています。

 福田長官は、「(有事法案を)万全にする意味で、国家的なものについて必要最小限度の秘匿は考えなければならない」と言明。さらに、罰則も「総合的に考えていかなければならない」とまでのべました。

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp