2002年5月10日(金)「しんぶん赤旗」
中国・瀋陽の日本総領事館内に駆け込んだ北朝鮮人が、領事館内に立ち入った中国の武装警官に連行される事件が八日に起きました。
「外交関係にかんするウィーン条約」(一九六四年)と「領事関係にかんするウィーン条約」(一九六七年)は、外国の大使館や領事館の「不可侵」の治外法権を認めています。
中国の武装警官が日本領事館の許可なく立ち入り、領事館の同意なしに連行したことは、明確な国際法違反になります。中国当局はウィーン条約を順守し、違法行為前の状態に原状回復するための措置をとるべきです。拘束した北朝鮮人の扱いについては、国際法にもとづいて対処すべきです。
拘束された五人は、韓国への亡命を希望していたとみられます。昨年六月に北朝鮮人の家族七人が国連難民高等弁務官(UNHCR)の北京事務所に駆け込んだ事件以来、韓国亡命を望む北朝鮮人が中国領内の外国公館駆け込みを試みた事件は九件に達します。いずれの事件も、公館内に入ることに成功した場合は、第三国を経由して韓国入りしています。今回のように、中国の警官が侵入したり連行した例はありません。
一方、今回の亡命(未遂)にあたって韓国、日本を含む外国の団体・個人が公館駆け込みを支援していることが明らかになっています。また、事前に日米当局や一部マスコミに情報が流れていたとの報道があります。こうした活動にかかわる人の中には、北朝鮮の「体制崩壊を期待する」と公言する人もいます。
韓国への亡命を望む北朝鮮人については、本人の意思を尊重するという人権保護の観点から対処するのが原則です。政治的に利用するべきではありません。(面川誠記者)
外交関係にかんするウィーン条約 第二二条
1 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
2 接受国は、侵入または損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
領事関係にかんするウィーン条約 第三一条
1 領事機関の公館は、この条に定める限度において不可侵とする。
2 接受国の当局は、領事機関の長もしくはその指名した者または派遣国の外国使節団の長の同意がある場合を除くほか、領事機関の公館でもっぱら領事機関の活動のために使用される部分に立ち入ってはならない。ただし、火災その他迅速な保護措置を必要とする災害の場合には、領事機関の長の同意があったものとみなす。
3 接受国は、2の規定に従うことを条件として、領事機関の公館を侵入または損壊から保護するため及び領事機関の安寧の妨害または領事機関の威厳の侵害を防止するためすべての適当な措置をとる特別の責務を有する。