2002年5月5日(日)「しんぶん赤旗」
有事三法案=戦争国家法案は、首相に戦争遂行のための強大な権限を集中する一方で、国権の最高機関である国会はカヤの外においています。
とりわけ、自治体や民間の動員を決める「対処基本方針」は、閣議で決定すると同時に、国会の承認なしで実施できる仕組みです。小泉首相も、「武力攻撃が予測される事態において、一定の範囲で(国会承認前に)対処を始める必要があることについて理解いただきたい」(二十六日の衆院本会議)などと、これを当然とする態度を示しました。
しかし、国の主権が脅かされる事態こそ、主権者国民の意思や、それを代表する国会の意思がもっとも尊重されなければならないときです。国会を脇において、首相が独断専行できるシステムは許されません。
首相もこのことを意識したのか、「政府が国会の審議などを通じて示された国会の意思を尊重することは当然」と答弁。しかし、具体的には「国会の判断に必要な情報を可能な範囲で開示していく」というだけ。政府が独占的に握る情報のなかから、都合のいいものだけを知らせようという態度です。
日本共産党の石井郁子副委員長は、このことについて「国権の最高機関である国会をも脇において、政府が独断専行するものではないか」と追及しました。
これにたいし、小泉首相は、「現行法制に比べ国会の関与を強化した面もあり、政府の独断専行との指摘はあたらない」とのべました。これまで国会承認の対象外だった「防衛出動待機命令」を承認の対象としたからだというのです。
しかし、「防衛出動待機命令」を国会承認にしたのは、自衛隊の出動についても「対処基本方針」に書きこんで国会の承認を受ける仕組みにしたという技術的な問題からです。また、自衛隊法改悪案では、「待機命令」時から「展開予定地域」を設定したり、そこで陣地構築をすることなどが盛り込まれ、実質的な出動と同然となります。そのことを国会承認としたからといって、「国会の関与の強化」にはなりません。
だいたい、「防衛出動」を含めた対処基本方針全体は「原則事後承認」(内閣府)であることは明確です。法案九条十項には国会承認前に活動を開始することを前提に撤収の規定が書かれています。
結局、戦争国家法案は、「武力攻撃事態への迅速な対応」という口実で、戦争最優先の国づくりをめざすものです。