2002年5月2日(木)「しんぶん赤旗」
「ムネオハウス」の入札介入疑惑で、鈴木宗男衆院議員の公設秘書が逮捕されたことで、政府・与党内から鈴木氏の“自発的”な議員辞職を求める声が強まっています。辞職は当然ですが、そこには戦争国家法案(有事三法案)など、一連の悪法の審議が行われる連休明けの国会運営や、連立政権の枠組みへの影響を避けたいという党略的思惑も見え隠れします。
公設秘書の逮捕を受け、いま国会に求められているのは、(1)衆院予算委員会としての偽証告発(2)鈴木氏の再証人喚問(3)鈴木氏に対する議員辞職勧告決議案の本会議採決です。
浅野勝人議員(自民)「公設、私設を問わず、あなたの秘書がかかわっていた可能性はないか」
鈴木氏「かかわっていたということはない」
三月十一日の証人喚問で鈴木氏は、秘書らの関与を完全に否定していました。
鈴木氏はさらに、この証人喚問で、「ムネオハウス」の入札参加資格をもつのが同氏の後援企業一社になるのを認識していながら「知らなかった」などと証言していました。野党四党はすでに偽証罪で最高検察庁に告発しています。
自民、公明、保守の与党三党はこれまで、「捜査当局の解明を見守る」(自民党・大島理森国対委員長)として、議院証言法にもとづく衆院予算委員会としての偽証告発に背を向けてきました。今回の秘書らの逮捕で、鈴木氏の偽証の可能性はいっそう高まっており、今後も「見守る」という姿勢をつづけるのでは、鈴木氏と同罪です。
今回の逮捕の理由となったのは、鈴木事務所での秘書と業者との談合ですが、鈴木氏は、外務省・支援委員会に「ムネオハウス」の入札参加資格を同氏の後援企業だけとなるよう圧力をかけていました。
当時、官房副長官だった鈴木氏は入札情報も知りうる立場にあり、「秘書が勝手にやった」との説明は通用しません。
鈴木疑惑については証人喚問後も、日ロ領土交渉をめぐる「二重外交」疑惑という国益にかかわる重大問題も明らかになっています。再証人喚問で一連の真相を明らかにする必要があります。
「いまだ疑惑の段階にとどまっており、現時点で辞職勧告をするのは時期尚早」(公明党の東順治衆院議員)――。これまで与党はこんな理屈で鈴木氏に対する議員辞職勧告決議案を衆院議院運営委員会でたなざらしにしてきました。
ところが、秘書逮捕で与党内では、「議員辞職が相当と考えているので、そういう状況になるかどうかを見極めながら判断したい。政治的道義的責任は重いといわざるをえない」(公明党の神崎武法代表)などという声が強まっています。
小泉純一郎首相は一日、外遊中のシドニーでの記者懇談会で「鈴木氏もよく状況を考えて自らの進退を判断されると思う。公設秘書逮捕は本人にとって大変重い」と同氏の議員辞職を促しました。しかし、その理由は「今回の不祥事は政権に与える影響は大きい。政策推進に支障になる」というもので、国会対策をかなり意識したものです。
今回の事件が鈴木氏の辞職に値するというなら、決議案を堂々と本会議で採決し、国会としての自浄能力を示すべきです。(高柳幸雄記者)