日本共産党

2002年4月29日(月)「しんぶん赤旗」

マスコミ時評

小泉政権一年 熱狂は冷めたが…


 小泉政権が発足して一年たちました。新聞各社は政権一年の社説や特集を組みました。

各紙の社説には手厳しい指摘も

 内閣支持率が七〜八割を維持しつづけるという熱狂は、いまや昔。支持率はおおむね往時の半減、支持―不支持の差も数ポイントにまで接近するなど様変わりしたなか、各紙の社説には手厳しい指摘もありました。

 たとえば「熱狂冷め真贋(しんがん)問われる小泉内閣一年」という「日経」です。「一年もすれば、その真贋(本物とにせ物)の見当はついてくるものだ」が一向に「目に見えるような成果はでていない」。とくに「悪化一方の経済状況に国民の我慢は限界に近づいている」と指摘します。

 「毎日」は、国民が願う景気回復の展望が見えないこと、自衛隊戦時派遣や靖国参拝など「自民党の保守派が願望してやまなかった」課題に熱心なこと、政治腐敗に人ごとであることなどをあげて「改革の立ち往生ぶり」をいいます。

 「変えます、変わります、と言いながら、国民にはなかなかそれが見えてこない」「国民も言葉だけの政治を見透かしつつある」(「読売」)とか「まだ一年しかたっていない、とは言わせない」「自民党を壊してでも、の約束を実践するときだ」(「東京」)という視点からの批判も目立ちます。

一挙手一投足まで持ち上げた責任は

 「化け物」とまで呼ばれるほどの高支持率がことし一月末まで続いた異常な事態は、その一挙手一投足まで持ち上げたマスコミの存在を抜きに考えられません。

 マスコミは支持率が急落する直前まで「不況下で小泉人気が続くのはなぜか」「気配り不足が人気の秘密」(「日経」)などと訳のわからない議論を展開して首相を持ち上げました。

 その特徴は、小泉「改革」の中身をまともに吟味しようともせず、「改革」と名がつけば、国民にどんなに犠牲が押しつけられようと、失業や倒産が激増しようと、結構結構と応援し続けたことです。

 「自民党をぶっ壊す」という人物を自民党が総理総裁に担ぐこと自体が最大の虚構であることを承知で、昨年の参院選のさなかに「だまされてみますか」(「毎日」)とけしかける論評までありました。

 一年たって「熱狂が冷め」たことは結構ですが、「空虚な言葉に国民はついていかない」と批判するなら、マスコミはこういう政権を手放しに持ち上げてきた不明を恥じるべきではないか。それが国民への最小限の責任でしょう。

なお未練がましくエールを送るとは

 いま国民がこの政権を見限りはじめたのは、一連の疑惑や官房機密費など政治腐敗にたいする無責任な対応から、首相が自民党を壊すどころか、醜悪な自民党政治を擁護する存在であることが鮮明になってきたためです。

 その背景には、「改革なくして景気回復なし」というスローガンとは逆に、小泉改革が国民の暮らしを直撃し日本経済を破たんに追い込んできた現実があります。

 ここまで事態がハッキリしてきたのに、各紙はいまだに小泉「改革」に期待を寄せ、「まず実績を上げること」(「読売」)だと医療改悪や不良債権処理の強行、さらには有事立法を迫っています。

 「挽回のドラマを見たい」と首相にエールを送った「朝日」はその最たるものです。

 道路公団や郵政事業の民営化をあげ「立ちはだかる道路族や郵政族。巨大な議員集団を壊さなければ前に進めない」と相変わらず「vs抵抗勢力」の構図を描いて、「党との戦い」を挽回への手がかりとするよう進言します。

 この一方で、新聞協会や放送界などマスコミがこぞって反対しているメディア規制法案とか、その中身には大きな疑問があると社説で論じた有事法制、同社の世論調査でも「三割負担反対」が多くを占めた医療改悪案など、現に小泉政権が強行しようとしていることをなんら問題にしないのは、どうしたことか。

 いま、国民の多くから、小泉首相こそ自民党政治にどっぷりつかった頑迷なタカ派である正体を見破られつつあるときに、なお未練がましく挽回を期待してエールを送り続けるとは、世論を誤導するものというべきです。(近藤正男記者)

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp