2002年4月28日(日)「しんぶん赤旗」
イタリアのベルルスコーニ右派政権は、世界の紛争地域への小型兵器輸出を規制してきた法律の改悪案を提出、規制緩和を狙っています。一方、同国の代表的な兵器生産地ブレーシャでは、規制緩和に反対する市民の運動が広がり始めています。(イタリア北部ブレーシャで島田峰隆 写真も)
ブレーシャで毎年恒例の銃や小型兵器の見本市が開かれた四月半ば、戦争と武器輸出を考えるシンポジウムが並行して開かれ、約二百人の市民が参加しました。
「地球全体を覆う武器販売ルートがあるから紛争地域にも武器が届く。ルートの規制は戦争防止の大切な要素だ」―主催団体「ブレーシャ社会フォーラム」の代表は報告でこう強調しました。
「内戦が続くアフリカのコンゴ民主共和国に一九九七―九八年、二百七十万ドル相当のイタリア製小型兵器が売却された」
「政府軍と武装勢力との紛争が続くアルジェリアにイタリア企業は二〇〇〇年に百万ユーロ(約一億千五百万円)相当のピストルや機関銃を販売した」
「国連によると、この十年間に紛争で使われた小型兵器によって世界で二百万人の子どもが死亡、五百万人の子どもが障害者となった」
紛争地に輸出された武器が戦闘を激化させ、民間人殺害に使われる―「死の商人」の犯罪が生々しく報告されました。
イタリアには武器輸出の透明性を確保して紛争地域への輸出を規制する法律があり、一定の力を発揮してきました。
企業は武器販売に際し、複数の省庁にまたがって銀行取引や税手続きの承認を受ける義務を負います。販売量と種類、取引銀行や販売先、武器の最終利用地などを国会に毎年報告することも義務付け、「欧州でも最も厳しい輸出規制の一つ」(軍事担当記者)といわれます。
右派政権は規制を大幅緩和する法案を提出、三月下旬から下院で審議も始まりました。野党・中道左派連合も賛成し、改悪が強行される危険もあります。
この動きの背景にはイタリアも含む欧州六カ国の軍需産業が〇〇年に統合・再編合意をまとめたことがあります。
軍事問題研究家の一人は「欧州の軍需産業が米国に対して競争力をつけるには、イタリアの厳格な輸出規制は大きな障害。企業も輸出を販売拡大の最大重点としている」と指摘します。
昨年秋のアフガニスタン空爆をきっかけに広がった戦争反対の世論を受け、改悪反対の運動も起きています。
ブレーシャでは十三日、約一万人が市内をデモ行進し改悪反対を訴えました。「社会フォーラム」は討論会や展示会を繰り返し開き、国会議員に改悪に反対するよう求めるはがきを送る運動や署名も始めました。
「フォーラム」の一員のモメッティさん(45)は語ります。
「ブレーシャは地元の軍需産業に依存した町で武器輸出の規制を語ることはタブーでした。しかしアフガン空爆を機にした運動で世論にもこれまでにない変化が起きています。ブレーシャが武器輸出の国際的規制の発祥地となり、平和に貢献することを願っています」